レクストリームで世界を獲る物語その6-世界大会準備編

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毎年世界大会に向けてスケジュールを考えていくとAP部門への出場でも憂鬱な気分になるのに競技で、しかも優勝をしないといけないといいうプレッシャーを背負ってのプロの準備となると想像もつきません、、、そんなReiが世界大会に向けてどのように作りこんでいったのでしょうか

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全国大会が終わり、最終の目標である世界大会の構想を練り始めました。

JN迄である程度は結果が出せていただので、練習方法は大きくは変えず、

あとはクオリティの維持と、3ヵ月の時間でどの程度のレベルアップが出来るかが課題でした。

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JN前から世界大会のことは考えていたのか、JNの結果を見てから世界大会のことを考えようと思っていたのか聞いていい?

何人かの人はJN、は通過点で世界大会に照準を絞る人もいるし、JNでテスト?してみて世界大会に向けて構成を大きく変えたり調整するというのもあり得ると思うので。

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この時点で世界大会の事は考えており、ぶっちゃけCJの時点で曲は決まってました。ソロハム以外の部分では大幅な技変更はしていなかったので、JNの練習も世界の練習の一部になるだろう、的な考えでしたし。めっちゃ難しいからJN構成には入れないで、世界でやろう、みたいな技もその時点で何個かあったので。

世界で曲を変えたのは、いつか使いたいな、とタイミングを伺っていた曲があり、ヨーロッパでの世界大会会場にマッチしそうな曲だったからです。あとCJ,JNとinvaders Must Dieを使ったので、3回は使い過ぎだろう、という事で曲は変更しました。

この曲は2009年くらいの時点で候補には挙がっていたんですが、何せ曲のパワーが強く、ある程度の実力にならないとまだ使えない、使ったとしても曲負けして、見ていて違和感のある演技になってしまうと思ってたので、結構長い間温めていました。

あとはソロハムが今現時点で一番の自分の武器であったし、伸ばしたかった部分でもあったので、ラスト1分は全てソロハムパートにする事にしました。

ソロハムを入れるにあたっていくつかの構成における狙いや達成目標があったのですが、その一つが「構成密度を高め、洗練する事」でした。

密度を高めるといってもとにかく技を詰め込む!というわけではなく、「本当に必要な技を厳選して、無駄な場つなぎや、そんなに必要性を感じない技を切り落とし、密度の高い構成を作る」という意味合いです。理想を言ってしまえば、構成中に行われた全ての技に対し、「何故そのタイミングで、その技を実施するのか?」という理由付けが出来なければならないと思います。

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無駄をなくす、意味の無い動きをそぎ落とす、という作業は始めたらきりが無くて、ヨーヨーの色を落としてぴかぴかに磨き上げる作業と同じで時間がかかってしかも磨き終わりに限界がありません。自分が満足するときが終わるときです。

自分の場合、AP部門などは特にルールも無く、白紙の状態に全部自分で書き出していかないといけない状態なのでとりあえず何かを置く、ということができません。最終的にはなぜそのタイミングでそれをしているのか、ということはとても意識をしています。技もそうですし突き詰めたらその一歩、となります。今年の自分の構成は歩き出しの足も、歩数も決まっていました(それが外に伝わらなくても良いですが自分が伝えたいことが全部伝わるかはまた別の話)

ステージングであれば会場に入った時点からキャラクターを意識して行動しないといけないですし(本来はキャラクターに関しては日常からその作業が入ります)、アップをする意味以外でもその時点で何でそれをしているかを意識しておくと自分がステージで意識していく上で役に立ちます。

3分間のフリースタイルでも落ち着くための効果もあるとは思いますが、無意味な動作の繰り返しがあることが多いと思うので自分の中の無駄を見つけて圧縮できれば密度の濃いブラウニーのようなフリースタイルができると思います。

いうは簡単ですがそれを実行するのは至難の業です。

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今まで3分行っていた1個の技の中から、本当に必要な技だけを抜き出して2分に凝縮、残り1分にソロハムを詰め込む、という構成の作り方に結果的にはなりましたね。最初にソロハムを公式大会で披露した2012CJでは1技だけ、多分20秒くらいしかやってなかったと思います。それを段々と30秒、40秒、1分、という風に伸ばしていくような形で、ここ2年くらいは構成を変化させていきましたね。その分、1個のパートの密度を上げてく狙いがありました。

それと上記にも書いた通り一番やりたいカテゴリだったのもそうですが、やはり一番難易度の高いパートになるので、その時間が長くなった分、自分の技術向上につながると思ったからです。

少し先走って今後の話をしてしまうと、次はもっとソロハムで無駄な動きを無くしてく事かなと思います。技開発はもちろんまだ続けますが、それと同時にソロハムパートにおける無駄をそぎ落とす段階にいかなければと。技と技の間にある「通常のソロハム状態時間」をなるべくカットしていくとか。ある2Aのトッププレイヤーが、「ノー・ダブルループ・フリースタイル」をやりたい、って話を聞いた事があるんですが、それと同じかなと。無駄をそぎ落として、洗練してく作業。

実際は行われなかったですが、当初のルールではナショナル優勝者も準決勝がある予定だったので予選の構成は準備してました。その構成も、1分半のうちラスト30秒はソロハムパートにしてました。

実際に構成を組んでやってみると、やはり最後の1分はリスキーでしたね。

特に一番最後の技が同時2個マウントのソロハムスタートでしたから、それミスっちゃったら全部台無しですし。

ソロハムパートは途中一回駄目になると、ほぼ何もできずトータル演技時間2分、みたいな回も沢山ありました。

曲を分割して、①0:00-1:00, ②1:00-2:00 ③2:00-3:00

みたいな感じの曲を時間毎で3曲作り、何回か3分を通した後、完成度の低かった時間帯のパートを集中的に練習しました。

③がやっぱり一番練習したと思います。

ある一定のパートやコンボを回数区切ってセットで繰り返す、っていうのはサーカスジャグラーの練習方法でも聞いた事があります。

あとはこの時期、色々な場所で世界大会の構成でデモを行う機会があったので、それは確実にプラスになりましたね。

人前で緊張した状態で通す1回は、漠然とした通し練習1回の何倍も効果とその価値があると思います。

失敗したら、その失敗事例のサンプリングにもなりますので、リカバリー対策の参考にしてました。

yoyofactory の Gentry やDUNCAN Crew の Zacも来日してたのでよく一緒に練習してましたし、住んでる地域が近い城戸慎也君とはホントにお互いの曲にうんざりするほど、よく構成を通し合った記憶があります。

モチベーション高い選手と一緒に練習すると、やはり相乗効果が合って良いですね。

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自分も世界大会前の次期にイベントで世界大会の構成の一部を披露したり披露会をやって必要以上のプレッシャーの中でやるということはやっています。また絶対に自分の構成の初披露が世界大会というのはやってはいけないすぐやめるべき悪習だと思っています。構成を隠したいという気持ちはわかるけれどより多くの人の前で安定して出来てなんぼのはずなのでJNにしても地区大会にしても本番で初披露はやめるべきだよね、、、身内だけでも披露したり練習会ベースで披露してしかるべきなのに未だに多くの人がぶっつけ本番かそれに近い状態で望んでいると思います。
人前でやるのって結構重要だよね

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客観的に自分を見れているかというところですね。
僕の場合、なるべく一緒に練習してるプレイヤーに意見を求めるようには務めてました。こっちの動きとこっちの動き、どっちが良い?みたいなのとか。やっぱり自分だけじゃ価値観が狭くなり勝ちですし、どうしても限界があるかと思ってます。

 あと他の選手の良いところを取り入れる事。例えば城戸慎也君は有名な1Aプレイヤーですが、彼の特筆する点として、一個一個の技を丁寧に行うところは参考にしてます。技の動作が終わりきるまで待ってから、次の動作に移る。無理に流さないというか。キャッチする技はちゃんとキャッチしてから次の技へ移行する。3Aの古田君も同じ感じがします。一個一個のヨーヨー挙動とその移行が丁寧だし、自分がヨーヨーを扱うのに適切な動き方とスピード、リズムをしっかりと把握し、本番でも落ち着いて崩さない点は見習いたいです。

 自戒も込めてますが、結構これ出来て無いプレイヤー多いです。次の技に焦って移ろうとして、キャッチミスや投げ出しにくいキャッチになってしまうパターン。技でミスるのはしょうがないしある程度リスクが発生した結果なのでOKだとは思いますが、キャッチミスはホントに何のメリットもない、ただただ構成における損害なので、そこは気を付けるようにはしてます。

長谷川さんの言う通り、構成披露が世界大会、ていうのは避けた方が良いですね。やはりある程度緊張する人前でやらないと、本来の成功率の感覚がつかめないと思います。あと少し話がそれますが、練習会でフリーの時間とかってありますよね?あれで構成特に無いのに適当にフリーやるってのは、あんまり意味がないんじゃないかと思ってます。もちろん人前でヨーヨーをやる経験をちょっと積みたい、レベルの人ならそれでも良いんですが、大会に出ているようなプレイヤーならば、そこを演技が試行錯誤できる場として活用した方が僕は良いと思います。月1とかの練習会の為だけに、フリーを組んで、そこで発表するってのは、昔のプレイヤーは結構やってた気がします。それがフリースタイルを作る練習にもなるし、当然その演技が大会発表予定のものであれば、メリットは大きいはずです。チャレンジしたい構成を試せる機会にもなりますしね。

 もちろん構成隠したい気持ちもわかるので、その場合一部の身内だけに練習会でちょっと見てくれない?といって披露する感じで良いと思うので。

そんなこんなで練習を続けていき、JNから比べソロハム技をやや増やした構成になんとか落ち着きました。

最終的な成功率の感覚は、

・ノーミス…35%

・8~9割の出来…50%

・事故…10%

・大事故…5%

くらいだったと思います。

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大事故も5%もあるリスキーな構成で臨もうと思った時、それでもいけちゃうだろうと思っている部分もあったと思うのですが自信の源みたいなものがあれば。あとぶっちゃけ優勝は狙って取りに行ってるのか、結論出たあとなのでずるい気もするけどその時の心境を聞いてみたいです。

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大事故5%ですが、ほぼこれはソロハムのミスに起因するものです。ソロハムを入れる前迄の構成と違って、もうこのカテゴリーを組み込んでいる時点で大事故の可能性は20回通したら1回は発生しうるくらいのリスクとして受け入れるしかないんじゃないかと(笑) 本来の構成の作り方からしたら、僕はするべき構成の作り方ではないと思います。ノーミス前提で作らなければ駄目です。たまに「練習ではノーミス出てたんだけど、本番では決まらなかったなぁ。。」という言葉を聞きますが、練習でノーミス出して当たり前くらいのレベルじゃなと本番では決まらないです。(最近の1Aとかはさすがに厳しいかもしれませんが。。。)本来ならば成功率80%と成功率100%の技を、2:8程度の配分で入れ込むべきです。ミスが命取りになる1分フリースタイルでは、成功率90%と100%を1:9の配分、ノーミスが出て当たり前、くらいの構成じゃないと僕は大会ではやらないですね。

 しかし、どうしてもやりたい技だったし、まぁソロハムでミスってしまったらまだ諦めがつくし、どうせ失敗してしまうなら挑戦してた方が、自分が納得するだろうと。自分が一番コンセプトとして打ち出した技をしないのも、もやもやが残るでしょうしね。もちろん、それでも大事故5%がボーダーだと思ってます。成功率が半々の技とかは絶対に入れないし。事故10%も1停止5ミスくらいの認識です。

 現行ルールでいけば、曲が終わった後にヨーヨー回収できないような形のミスであれば特別減点-3×2でトータルポイントから-6ですからね。リカバリーもどうしても時間がかかるし、ソロハム、やっぱりリスキーです。 

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世界大会のときの目標設定とかはあるの?

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基本的にどの大会も結果を先行して目標設定する事はあまり無いです。何よりもまず「ステージ上で自身の100%を発揮する事」、を目標として掲げています。もちろん結果は別にどうでもよい、という事ではなく、自分が満足するものを出せれば、結果は後から付いてくるものだと考えています。あと順位を気にし過ぎると、自分の演技に集中しにくくなるかなーとはちょっと思います。

もう少し加えると、逆に言えば本番で100%以上のもの、練習でやってた以上のものが出る、というような事は無いと思ってます。だからこそ練習でミスが出てしまうような段階の構成は、大会には用意しませんね。

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その年のヨーヨーの常識での中の難しい、信じられないを自分の練習を持ってその人にとっては簡単のレベルまで落として実行するということをしていかないと実行度が高く、難易度の高いフリースタイルはできないようです。簡単な技を羅列して失敗をしない綺麗なフリースタイルを作ることも初期の段階では必要ですが、Reiの場合、自分の中の基準がとても高いところにおかれています。

もう一つした質問で優勝は狙っていましたか、ということにも最後に答えてもらいました。これ一読すると自己満足のようでもありますが、最終的には表現競技なので自己満足が無いのであればやっていてつまらないと思います。

多くの人が自分がやりたいことよりもポイントを獲りに行く作業に没頭せざるを得ない中、とっても欲張りな目標を掲げて自己大満足を実現しているようです。

茶化す意味ではなくてさすが世界チャンピオン、と思いました。

次回は世界大会プラハ楽しいな!編です。