今回、ダンカンからバンブルビーというヨーヨーが発売されます。
オリジナルのバンブルビーについても、知っている人も多いヨーヨーかと思いますがもう一機種、踏まえておかないと今回の機種のオマージュ元を取り違えてしまうので解説させていただきます。
1997年発売。ハイパーヨーヨーではハイパーワスプとして発売されたPlaymaxx社のボールベアリングヨーヨーです。ベストセラーのProYoをベースにボールベアリング化。最大の特徴はコルクスターと呼ばれるブレーキパッドシステム。
Playmaxxのオーナーでもあり、ヨーヨーファクトリーのオーナー、YoHans氏の黎明期のヨーヨーデザインについて振り返るとき、ボールベアリングのヨーヨーは戻ってこないという当時の悩みをどうやってイノベイティブに解決していくかに彼以上に情熱を持ってデザインをした人はいない、と思います。
コルクをスターバーストにしたレスポンスシステム、サイズAベアリングを採用したすべりと戻りを両立したブレーキパッド。シリコンパッドはもちろん、ターボディスクやフリクションステッカーよりも早くに交換可能なレスポンスシステムという道を切り開きました。
スターバーストは戻りを良くするためにスターを高くするとその分、摩擦が生じ、スリープが短く、またストリングトリックをすると噛みやすいという欠点がありました。ベアリングサイズを8mmから10mmに変更していわゆるサイズA,ダンカンサイズの基礎となっただけではなく、ストリングトリックにはある程度のギャップと滑りが必要という問題点も結果的に解決していました。
フリーハンドが発売される2001年前後、バンブルビーのバタフライ版、バンブルビーGTは大会仕様機種としてもレネゲイトと並んで愛用されていました。
ヨーヨーとしてはうるさい、という欠点を蜂の羽音みたいという理由(Byヨーハン母)でマーケティングポイントに切り替えたのも新しい技術をわかりやすく伝えるスキルに長けたYoHansのセンスを感じさせます。
プロヨーとバンブルビーの成功で世界中でヨーヨーツアーを行い、UKではレコードデビューまでしてしまったPlaymaxxのYohansですが、在庫過多となり最終的にはダンカンにブランドと、商標、特許を含め百万個以上あったと言われる在庫ごと売却してしまいます。
その衰退期のPlaymaxx社は今では普通ですが小ロットでもの作りが可能ということでかなりの数のメタル機種を乱発していました。その中の一つがバンブルビーを忠実にメタル化したコールドフュージョンです。
金属のヨーヨーにブレーキパッドを搭載するという酔狂。
メタルヨーヨーのレスポンスシステムへの飽くなき追求は後日談があって、FAST201を出すタイミングでFASTシステムを搭載した金属製の201となる、301を販売するというところまで行っています。
豪華な缶にグローブとピンバッジがセットになって価格に見合ったコレクター製品として販売されていました。
とはいえSB-2という例外を除くと当時、150$近くするヨーヨーというのは別格に高く、少なくともメジャーブランドが大量生産して販売して受け入れられるような素地はできていなかったように思います。当時欲しかったけれど高いから見送ったというヨーヨーキッズ達も多かったと思います。また末期は投げ売りをされていたので当時の大人はギリギリバーゲンプライスでゲットした人も多かったと思います。(それでも高級品でした)
知られている割には出回る個体数が少なく、現在は値段が当時よりも高くなることも珍しくない中古市場でも人気のヨーヨーの一つです。
ようやく今回のバンブルビーへと話が繋がります。
もともとはメタルバンブルビーとしてデザインされておらず、コールドフュージョンのリメイクとして図面作成されたというのが経緯で、ギャップや形状もコールドフュージョンをオマージュする形で作成されています。
もちろんバンブルビーのメタル化がコールドフュージョンなのでそれをバイメタル化したらバンブルビーとも系統としてはつながってはいるのですがバンブルビーのようなルーピングがやりやすくというデザインではなく、最大ギャップのバリバリバインドで使うスリムバイメタルという仕上がりになっています。
コルクスターの分、セットバックされたフェイスまわりの意匠も重さに配慮しつつ再現されています。また重たくなりすぎないように中ぐりされてサムグラインドなど指がかかる形状になっています。
パッドがサイズC用のスリムサイズなのは当時またサイズA用のパッドの予定がなかったためです。最近発売されたFHOneと同様にフリクションステッカーのエリアは設けられているので引き戻しで使う場合はFHOneに付属している白いシリコンステッカーやフリクションステッカーを貼り付けると使いやすくなります。コルクスターは残念ながら使用することはできません。
ダンカンになってからも少数ですがコールドフュージョンが作られてます。おそらくは新規生産ではなく未アルマイト、もしくはレーザーの無い在庫にレーザーを入れただけと思われます。
当時のヨーヨーに思いを馳せつつ、サイズAのバイメタルという”酔狂”を楽しんでもらえればと思います。