ループ2020開発秘話ByYohans

LOOP2020の発売が間もなくです。スピンギアにも商品が入荷し、リリース日の情報を待っているところです。結構前から記事を用意していたので待ちきれずに発売に先駆けて公開します!唯一無二のコンセプト、ループに興味がなくてもヨーヨー本体のコンセプトが興味深いのでヨーヨープレイヤーの皆さんはぜひチェックしてほしいです!

前作の1080から5年近く経って、開発プロセスをプレイヤーたちと共有してきた単なる商品の枠を超えたヨーヨーを理論化してプロダクトに落とし込む、2Aプレイヤーが何を求めているのかを探る計画とも言える2020がついに発売です。チームメンバーとの開発協力はもちろん、フェイスブックのグループで試作品を提供し、意見を交換していくという今までにないスタイルでプロジェクトとして展開をしてきました。

ヨーヨーファクトリーのオーナーで201を始めとするヨーヨーファクトリーの画期的なヨーヨーを発明してきたYoHans(ヨーハン)にインタビューをしました。インタビューをしていて思ったのですがLOOP2020のセッティングの多さはループ機種を設計する上で意識しなければいけない多くの部分を網羅していて、他のメーカーの開発に対する姿勢にも大きな影響を与える(2Aヨーヨーが業界全体で進化する)インパクトのある出来事となりそうです。

開発に非常に時間がかかりましたね?なにかあったのでしょうか?LOOP900から始まった究極のルーピング機種開発の道のりを教えてください。

 ヨーヨーファクトリー®は”UNDENIABLE”というデザイン哲学を持っています。

辞書で引くと否定できない、明白な、非の打ち所のないなどという意味としてでてきます。

 私達は世界チャンピオンと初心者の人が初めて投げてもどちらも嬉しいと思えるヨーヨーを作ります。ベンマクフィーと私自身は2Aスタイルのプレーに情熱を持っています。長年に渡り、私達は完璧なコンセプトを追い求めたルーピング製品を開発し、進化させました。

ループ900は簡単に調整可能なギャップという哲学から始まりました。 コンセプトは良かったのですが、システムが複雑過ぎて生産を安定させるに至りませんでした。その後、大量生産に対応するために1080へと移行しています。

しかしながら ギャップを調整することは1つの要素に過ぎず、他の2つの要素に望ましくない結果をもたらしたことをすぐに発見しました。

ギャップを狭くすることで戻りを良くしていましたがそれにより空転時間がなくなり、ループの角度が制御できなくなりました。

この発見によりシンプルに1つの鍵をねじることですべてを解決するということはできないと結論が出ました。

まったくの白紙から計画を立ち上げ、3つの要素を独立して調整できる仕組みを考えていく必要がでてきました。

 

2020は新しい機能やセッティング方法を搭載していますがメインとなるコンセプトはなんですか?

 すべての機能は”コントロール”のためにあります。我々がループの技術を習得するとき、体がループの形角度スピードを覚えていきます。ループには3つのコントロールするべき要素があると考えました。

ループはいわゆる感覚で覚えるということで言葉での感覚の共有がとてもむずかしいとされてきました。3つの要素として視覚化、言語化することで解決するべき問題が見えてくるわけですね。

 ループの感覚を司る3つの要素は、湿度が変わると変わることも発見しました。 もしストリングの太さが変わっても3つの要素は変わってきます。 疲れていたり筋力が衰えていても変わってきます。同じプレイヤーでも、一度セッティングをしたら常に同じ状態で使えるということはないと発見しました。 その様々な状況の変化に対応するために、3つの要素に対応したカスタマイズ要素を作り出しました。

ギャップ

ループ2020はユーザーがそれぞれにボディ間のギャップをアクセルを交換することで調整することを可能にしました。これにより外周のリム部部に当たるストリングの摩擦を増やしたり減らしたりすることができます。これは回転時間と手首を通過するときにヨーヨーが反転するタイミングに影響を与えます。

ボディ間のギャップとスターバースト間のギャップを切り分けて考えてきた理論は新鮮に感じます。それぞれが独立して調整できることで単純な締め込みでレスポンスは増えるけど失われていた回転時間とループの反転の感覚が独立して調整できるというのはすごいことだと思います。

 ギャップが狭いことで空転時間は短くなりますが、ループのスピードは向上します。ギャップが広いと空転時間は長くなりますが、ループのスピードは遅くなります。

軸に対して紐を巻き付けていけばわかりますが、ギャップが狭いということはそれだけ紐を巻くスペースが無くなり、同じ紐の長さでも紐が外側に来ます。手元からヨーヨーを”1回転”させたときの巻いている距離が長いので、解けるスピードも早くなり、また巻き上がってくるスピードも上がり、ループスピードに影響を与えます。

 一般的に広めのギャップはループがゆっくりなので初心者向き、狭いギャップはスピードが早くなり手首の返しが必要なのでエキスパート向きです。 この要素は最後に調整します。

レスポンス

レスポンス(戻りの感覚)は主にスターバーストでコントロールされます。ボディギャップを調整したとき、スターバースト間のギャップも影響があります。ボディギャップに影響されないようにスターバースト間のギャップを調整できるようにするために3種類のスターバーストがあります。中間の戻りが良い人や、ラップ系をするためにレスポンスをあえて落とすやり方を好む人もいます。このシステムにより完璧なセッティングに到達することができます。 この要素は2番目に調整します。

スペーサーの厚み

スペーサーはヨーヨー設計において不確定要素で理論化されていない信仰のような部分でした。(:ヨーハンはブードゥー(邪教)と表現しています)。プレイヤーはスペーサーを削りますが、なぜそれによってパフォーマンスが変わるのかを理論的に説明できないのです。実際にフィーリングが変わるのは事実ですがそれを理論化できていないことで、我々はスペーサーがループをコントロールする最後の砦だと悟りました。

ループは体育会的でどんなトッププレイヤーに聞いても練習あるのみ、感覚の違いはわかるけどなぜそれをするのかが説明できる人は少なく、ループ機種の開発は多くの優れたプレイヤーのいる日本でも長い間難航してきました。大まかな使いやすい状態には持っていけますが20年近くループをしてきたトップレベルの選手たちはそれぞれに全くと言ってもいいくらい違うやり方でヨーヨーのセッティングをしていますがなぜそれがいいかを”やりやすい”Or”やりにくい”という言葉以外に表現するすべを持たないのです。感覚に勝る評価はないのですが製品を開発する側からするとその感覚を図面にして工場に伝えて形にするというのは迷信を科学として取り扱うくらい困難なことでした。上にあげてきたすべての要素が完璧にセッティングされた状態で、スペーサーの違いによって何が起きるかを導き出すこと、ループを理論化して、プロダクトに落とし込んでいくというチャレンジをヨーハンはついに始めたのです。

 その他の条件が同じだとして、スペ-サーが薄いとストリングとの摩擦が少なくループ軌道が一瞬止まるような感じになります。伸び切ったときのこの間(望むと望まないとにかかわらず起きる)はより長い空転時間を許容しますが、ループの角度は上向きになり、ループの形状は非常に尖った楕円軌道を描きます。 スペーサーが厚いとストリングとの摩擦が大きく、空転時間が減ります。またループは落ち気味になり、ループの形状はより丸くなります。 この要素は最初に調整します!

重量

理想的にはヨーヨーを軽量化してループを繰り返すときに指を疲れさせないようにしたい。しかしながら十分なスリープ時間のためにある程度の重さも必要です。本体重量52gがちょうどよいバランスであると発見しました。

追加要素

我々はループ2020のLEDキャップキットをノーマルと比べても、大きな重量追加無しで作るように白紙の時点から想定をして、本体の開発をしてきました。 不可能のようでしたが達成することができました。 2020のLEDは不確定要素の多い遠心スイッチではなく、究極の信頼性のために、通常のスイッチ切り替えでON/OFFを切り替えています。

時間のかかったループ2020、理論化してその要素をどのようにデザインに落とし込むかの考察期間は理解できますが、実際にプロト制作が始まってから商品化まで時間がかかりました。苦労した点はなんですか?

 Loop2020は非常に細かい公差で設計されていてプラステイックヨーヨーでその公差を保つのは非常に困難です。各部品のエンジニアリング許容差、スペックは0.00508mmで人間の髪の毛の厚さの半分です。 この小さな許容差は世界チャンピオンの高田柊選手と、彼と同じくらい真剣にうまくなりたい人にとっては信頼できる結果を得る上で非常に重要です。

公差というのは誤差の許容範囲のことです。プラスティックヨーヨーは金型で作られるために、冷えて固まる過程で収縮が起き、金属製のヨーヨーのようにすべて同じ形ということは難しいです。主にアクセルとナットに帰来するループ機種にありがちなハの字になる状態も回転時間に影響があります。LOOP2020は特に多くの部品で構成されているので、少しの誤差が大きな差になりますが、旋盤加工されたナットを使ったり、ひけを生じにくい形状にしていくことでループ機種であまり気にしてこられなかったであろう”精度”という品質にも注意を払っているのがわかるかと思います。

競技プレイヤーではなく2Aを楽しむ上でのヨーハン的おすすめのセッティングはありますか?

ヨーハンおすすめセッティング

パーツ:#1スターと#2スターのハーフ、#1スペーサー(両方)、#2アクセル
ストリング:スリック6 81.5cm
オイル:脱脂済みベアリングの側面にストリングトリック用オイルを1滴、ラップするようにルーピングトリック用オイルを1滴垂らします(ミックス)。

これからの2Aプレイヤーの会話がこのように理論的になってくと新しい世界が開けそうです。オイルミックスはスリープとループの戻りを両立させたい人には定番のやり方ですね。

最後にループを練習する人にメッセージがあれば!

ループとスリープタイム どんなに時間をかけて、セットアップが決まっても、練習時間に勝る上達方法はありません

いい”オチ”がついたようです。最終的にやはり”まわす以上に”ループ上達の近道はないということですね。ヨーハンらしい、哲学的な答えです。理論化して必要なことを全て揃えても練習しないことにはうまくならない、、、

しかしLOOP2020の登場により3つの要素をそれぞれ独立して調整、しかも部品交換のみでネジ調整のときのような不確定要素や感覚に頼る部分がなくなったことで、ベストセッティングを見つけるためのアプローチは非常に簡単になりました。 Aプレイヤーの多くがヨーヨーを”作る”ことに時間を費やし、ときに新品のヨーヨーを締め込みすぎて使う前に壊してしまい、ループの練習とヨーヨーを作る練習両方共必要だと言われていた状況からすると”発明”とも言える進化を遂げています。 多くのルーピング機種の選択肢が出てきましたが、2020と同じ事ができるヨーヨーは市場になく、これからも簡単には出てこないと思います。LOOP2020はすべてのループを愛するプレイヤーとこれからループをしてみようという人、そして世界チャンピオンに至るまでヨーヨーが好きな人全員に体験して欲しい新しい経験です。