プロローグ
地球の歴史46億年の歴史からすると人類の歴史はほんの一瞬の時間でしか無いそうです。
4大文明が始まった頃からあるこまの歴史からすると亜種であるヨーヨーはその中のほんの一部の歴史です。
何を言っているかわからないと思うのでしばらくお付き合いください。
僕らヨーヨーの世界の人からするとヨーヨーはヨーヨーであり、他の玩具とは違うものという認識です。ただヨーヨーを知らない一般の人からするとヨーヨーとこまは同じものに見えてしまうようです。公園でヨーヨーしているのにそのこま何?と話しかけられたり、親戚にあなたはこまが得意だったよね?とおそらく頭の中ではヨーヨーのイメージがあるけどアウトプットする時に他のスキルトイの名前が出てきていることありませんか?
なぜこのようなことが起きるのでしょう。
見た目が似ているから?
約100年前のヨーヨーは二つの円盤がくっついた形が基本でした。
そこからヨーヨーの形状が”進化”するにつれ、幅が広くなり、傾斜が緩くなり段々と”こま”化してきています。
またこまも形が進化してきています
日本の伝統的なこま
最新型のこま。回転を重視しリムに厚みがあります。
僕らからすると一般の人が、ヨーヨーとこまを混同する理由がわからないですが形だけを見るとこの十数年で近づいてきています。両方の世界を見ていると、何か一つの形に収斂してきているという感覚すらあります。
ただ両方のトレンドを知っているとは言えない、一般の人の認識がそのようになっているわけではなく昔ながらの形であれば、ヨーヨーとこまを並べておいて間違える人は少ないと思います。
1Aのヨーヨーを見せると、ちょっと知っている人はそれ中国独楽(ディアボロ)だよね?と嬉しそうに指摘してくれますがヨーヨーなんです、、、4Aをディアボロというのは理解できますが1Aのヨーヨーをディアボロというのは抵抗ある人多いんじゃないでしょうか?
見た目以外の共通点
プロローグでヨーヨーがこまの亜種だという話をしましたがこまの起源とされるものは、たたきこま(Whip Top)と呼ばれています。木の棒を削り、先端を尖らせた簡単な形状でした。エジプトのピラミッドの壁画に描かれていたり、日本でも千五百年近く前のこまがこの形で発見されています。(日本最古の独楽記事はこちら)
日本のディアボロ界にも多くの影響を与えたヨーヘンシェルさんも自身の動画でこのこまを回しています。何かを極めた後、オリジナルに触れると感慨深いものがあるのだと思います。また別の機会に触れられればと思いますがWhipTopはそれはそれで独特の魅力があり、いまのこまやヨーヨーの流れにつながる人間の根源的な欲求を満たす何かがあるかとおもいます。
日本も含め、世界中でこのスタイルのこまは遊ばれていて中世のヨーロッパでもディアボロと並んで遊ばれています。さまざまな文献で散見されます。
これを原種として国によって様々な形に枝分かれしていき、またディアボロのような亜種も1000年以上前に生まれていったと推測されます。
ヨーヨーの起源はいつか明確ではありませんが数百年前からいまの形のヨーヨーにつながるあそびとして、始まったと推測されます。アメリカでヨーヨーが登場した当時、商標回避のため、リターントップ(戻ってくるこま)と呼ばれていたことはみなさん知っているかと思います。またカナダではヨーヨーが商標として現在も有効なため、他の会社はリターントップという名称で今もヨーヨーを売っています。
ヨーヨーという概念がない時に初めて見た人にヨーヨーを説明する時、こまみたいなやつ。手に戻るこま、と言ったのは自然な流れだと思います。
こまの歴史をまとめた多くの本でも後半にこまの一種としてヨーヨーやディアボロが取り上げられています。こまの世界からするとヨーヨーはあくまでもこまの一種です。
ディアボロはこまの一種と言われて腑に落ちますがヨーヨーもこまの一種と言われると引っかかる気持ちはなんでしょうか。
定義:回る地球の上で、重力を活かし、紐を使い回転を与える物体
多くの人が興じる遊びには道具を使うものも使わないものも重力と回転が大きな影響を与えています。その中で道具を紐で回転を与えるという意味ではかなり狭い分類に絞ることができます。
ここでもう一つ人間という種について有名な話。人とチンパンジーのDNAは99%一致するそうです。科学的にどう評価するのかはさておき、人間側からすると全く違うと思っているチンパンジーとは紙一重の違いなんですね。特に人間を知らない地球外生命体からすると顕著だと思います。種族の違いかな?くらいです。
生物学的な分類を与えるとすると”こま科ヨーヨー属”と”こま科こま属”くらいの分類といえると思います。
ハイパーヨーヨーとヨーヨーの違いについて聞かれた時大体同じですって答えたことないですか?知らない人からするそれくらいの違いの認識である可能性もあるわけです。
ここで仮説
ヨーヨーとこまのDNAは99%一致する
これにより多くの人にヨーヨーとこまを言い間違えるという認識阻害が起きているのではと推測されます。
ただヨーヨーをこまと言われて引っかかるのはヨーヨーをしている人だけで世間一般からすると”どうでもよいこと”、瑣末なことです。自分達でヨーヨー界というボーダーをひき、その中での価値観だけで判断するのではなく、ヨーヨーでもこまでも楽しいからいいのでは?という視点を持つのも良いのかと思います。
ダンカンが歴史的にヨーヨーのプロモーションとスピントップのプロモーションを行ってきた経緯がありアメリカの年齢層高めの層は両方遊んだという記憶を持つ人たちも多いそうです。
とはいえヨーヨーとこま、道具の違いがあり、同じ遊びということにはなりません。さすがにそこまで無茶なことは言いません。
ヨーヨーもこまも何か通ずる同じものがあるのではないかという概念の芽生えを最初に形にしたボーダレスを発表してから5年が経ちました。
自分の中ではいまだに最高の遊びですが、どちらでもないのは理解しています。どちらでもよいとは思っていて、ヨーヨーの大会やこまの大会の両方でやっています。残念ながら、これによってヨーヨーとこまは同じようなものだという結論つけるには至りません。専用の設計をしていてヨーヨーにも、こまにもなる”モノ”を作っているからです。
1992年にヨーヨーの世界大会を始めたデールオリバーが2000年からスピントップの世界大会を始めたこと、自分にとってのメンターのデールオリバーがやってきたことを引き継いでいきたいという流れで今年のこまの世界大会主催は当然の帰結でした。
ヨーヨーはヨーヨーで、こまはこまで違いはあるけど楽しさの根本は同じだしどちらかだけ楽しむというよりは両方やれば楽しいのに、という気持ちもあります。
多くのヨーヨーマスターがこまも嗜んでいて、特にヨーヨー→スピントップに傾倒していく傾向があります。ヨーヨーを蔑ろにするつもりはありませんが、技をするだけではなく、そもそも姿勢を保つために意識を払わないといけないスピントップ(こま)はやることが一つ増えて、スキルトイの遊びの感覚としてももう一つ次元が増えるくらいの楽しみが、ヨーヨーをした後に始めると感じることができます。
最初からこまをしている人にはわからない楽しみなので特にヨーヨーを10年以上した人にとってはやりごたえのある遊びかと思います。
こまはヨーヨーと違い、左右で重量のバランスが違うため、歳差運動があり、縦で回しても横で回しても何もしないとその場で静止することができないため、ヨーヨーのように回転をつけてあとは勢いで動かしていくということができません。太極拳のようにすべてを回転の流れに逆らわない動きの中でつなげて姿勢制御と技を両立させていくことが必要になります。
自分自身、気功を練る感覚はありませんがイメージはそれに近く、回転を練る、静かに積み重ねていく楽しみを感じることができます。
現役最年長、82歳(動画時)の坂下名人はこの回転を練り切っていてこまを動かすのに力を使っていません。
自分自身、子供の頃こまでも遊んでいて、ヨーヨーを始めてからもこまの存在を認識していたけどヨーヨーはヨーヨー、こまはこまという考えで興味すら持ってこなかったことに対してもったいなかったと思い、多くの人に理解されないであろうけれども気がついてしまったことを少しでも多くの人に伝えたいという気持ちでここ数年は活動をしています。
ここで話がガラリと変わります。
視点をこまの世界からにしてみます
こまをしている人からすると最近のヨーヨー界のDNAの流行はそれってこまなのでは?と思うところがないわけでもありません。
現象としては螺旋を描く(巻き戻らないですが)技で、こま技の中でも初心者が最初にやる一番簡単な技の一つです。
ヨーヨーのDNAも難易度の面で高度な技、とは言えないですが少なくともヨーヨー初心者が初日にやる技ではありません。
また1Aの中で高度な技とされているホリゾンタルは、紐がついたこまに他ならず、軸を動かして歳差運動を制御する代わりに水平方向に振り回し続けることでヨーヨーの姿勢を制御しています。図らずもホリゾンタルをしている人たちが楽しいと感じる感覚はこまの技で感じる部分と同じなのです。難しいと思う理由の一つに油断すると落ちる、ヨーヨーの向きが変わるというのがあるかと思いますがこまプレイヤーはそれを常に意識する必要があります。
このようなことを考えている人はいないですが悪意ある言い方をすると、こま技では簡単なことを”やりにくい道具”で難しそうにやっている、という穿った見方もできてしまいます。(それは逆も言えますが)。
もちろんヨーヨーをしている人はヨーヨーが好きでヨーヨーでやるから楽しいのであってこまで同じことができるからそれが何?と思うのが普通です(むしろそんなこと考えないと思います)。
フィンガースピンもこまの”側”からすると、それ、こまです。完全に。皿回しというほうが現象としては近いかもしれません。(現象としての表現であって侮蔑する意図はありません)
両方の世界に足を突っ込んでしまったが故に、どちらかの技を見た時に反対側からの価値観で物事を見てしまう癖がついてしまっています。視野が広がったのか、余計な視点を持ってしまったのか。
極論するとヨーヨー界の最近のトレンド、意識してないと思うけどかなりこまに引っ張られてる(こま的な要素多め)部分があると思っています。
うまく言えないのだけど特にヨーヨーとこまに共通する部分、価値観のようなものをどう伝えるか、気がついてしまってから、どう表現できるかをわからずにここ数年はモヤモヤしていました。
2015年の世界大会後、こまにハマっていく中、ヨーヨーマスターなのに、と理解されない辛さみたいなものもありました。
ここで、改めての仮説
ヨーヨーとこまのDNAは99%一致する
を実証する動画を作りました。
今年の世界大会に向けて準備をしていました。きっかけは10月、八王子産のこま、オオルリのデザインを見ていた時です。
最初にこまを作り出した時も二つつけたらヨーヨーとしてありそう、という遊び
をしていましたが、回転体としての特性を追求し、プラスティックの射出整形でできる理想の形を追求していく中で形が”ヨーヨー的”になっていることに気がつきました。