こちらからの質問に答える形でコメントを頂きました。
ヨーヨーを始めたきっかけからヨーヨー開発の流れまで一気に紹介いたします。
Cheng Sheng-Wen(鄭盛文、通称CSW)選手は台湾の若手の4Aプレイヤー。ヨーヨーエンパイア所属。
WYYC2018 4A5位、AP2019 4A部門2位。今回発売される4A機種、Skylordのシグネチャー主で設計者でもある。
TAKA:シグネチャーモデル発売おめでとうこざいます。
最初にプロトを見たときからかなり時間が立ってさらに発売から1年空いてようやくスピンギアで入荷できました。
CSW:私のシグネチャーヨーヨーであるSkyLordを世の中に発表することができてとても嬉しいです。
SkyLordのコンセプトは、2015年に、大会で使ったAdegleyoyosのROCで
競技の世界へのめり込んでいった時から始まりました
ROCは素晴らしいヨーヨーでしたがもっと改善点があるはずだと考え
それで全て満足していたわけではありません。
ここが開発の出発点です。
数年後、私はヨーヨーエンパイアのNimbus Riderで台湾チャンピオンになり
その数日後にはYYEのスポンサープレイヤーになりました。
YYEは私の大好きなヨーヨーブランドで、高品質なヨーヨーを手頃な価格で提供しており
それぞれのヨーヨーの性能は価格以上のものがあります。
チームに参加してからも、2018年のWYYCの後も、YYEにはたくさん助けてもらいました。
その中で、シグネチャーモデルのSkyLordの製作とデザインの計画が動き出しました。
私は機械工学を専攻しているのでヨーヨーの形状は自分で設計しました。
設計の主なコンセプトは、ROCを改良して幅を広げ、形を整えることです。
SKYLORD
最初のプロトタイプをテストした後、修正すべき点を見つけました。
そして予想外にも、私とYYEによって修正された2番目のプロトタイプは
すぐに私のお気に入りのヨーヨーになりました。
SkyLordの主な要件は、安定していてパワフルであることです。
私のフリースタイルは、常に高い完成度と観客にとっての快適さを追求しています。
そのためリジェネレーションのやりやすさやスピードプレイを無視しているわけではないですが
より安定したヨーヨーを必要としています。
直径、幅、重量ともにバランスが取れていて、ステージ上やトリック練習中に安心感を
得たいと思っている私やすべてのプレイヤーに最もフィットするヨーヨーだと自負しています。
このヨーヨーが完成した後、私はAP2019に参加し、スカイロードで2位になりました。
これは私の国のAP史上最高位であり、他国のハイエンドプレイヤーに挑戦する勇気と能力を与えてくれました。
スカイロードとは、夢と知識の結晶であり、このヨーヨーと
このヨーヨーを使うすべてのプレイヤーがオフストリングトリックの空を
手に入れることができるようにという意味が込められています。
TAKA:素晴らしい機種紹介をありがとうございます。
台湾人としての誇りとして台湾ブランドのアデグルのヨーヨーをベースに
改良して金属リムによって抜群の安定感のあるヨーヨーに仕上がっています。
当時のROCやホエールといったアデグルの4Aは1Aライクな極端なインバースラウンドで
デイアボロ的なトリックには向いていましたが、リジェネレーションやスピードプレイには
不向きな形状でした。その部分をマイルドに改善させつつ、もともとのヨーヨーのキャラクター
としてのディアボロ感、安定してしっかり回るという感覚は引き継いでいます。
もっと選手としてのバックグラウンドを知ってもらうことでこのヨーヨーが
どういう経緯を持ったプレイヤーによってどういう意味を込めて設計されたのか
理解してもらえるかと思います。
最近みんなに聞く最初の質問なのですが、ヨーヨーを始めた時期ときっかけを教えて下さい!
CSW:私が初めてヨーヨーに出会ったのは2006年のことです。
「Blazing Teens」というヨーヨーをテーマにしたテレビドラマを見ました。
その後、母にヨーヨーを買ってくれるように頼みましたが、その時は賛成してくれませんでした。
しかし、ラッキーなことに学校でヨーヨーを見つけました。それはクラッチが付いていて
中にベアリングが入っていないおもちゃのヨーヨーでしたが、それでも私は楽しかったです。
数日後、私がテストで高得点を取ったとき、母はついに私がヨーヨーを買うことに同意しました。
私の最初の新しいヨーヨーはAudelyのFire Warriorで、スリーパー、ブレイクアウェイ
フォワードパスなどの基本的なトリックを学ぶのに役立ち
今まで遊んだおもちゃの中でもヨーヨーは最もクールなおもちゃでした。
さらに、私は子供の頃、ものすごく速く回転するものがとても好きだったので
ヨーヨーはその時すぐに私のお気に入りのおもちゃになりました。
TAKA:子供の頃、ヨーヨーが流行って普通に遊んでいた流れですね。
台湾はハイパーヨーヨー→SuperYoyo(超速スピナー)→間に中国の玩具会社の独自プロモーション
→Auldeyの火力少年王とヨーヨーのプロモーションが規模の大小はありますが
比較的コンスタントに行われていました。
初期のAuldeyは玩具メーカーらしいおもちゃ寄りなヨーヨーが多く
FireWarriorはノーマル形状のプラスティック機種で基本的な遊びを
するには良いかと思います。
ではいつ頃”競技”の世界に入っていくきっかけがあったんですか?
CSW:子供の頃はヨーヨーが大好きでしたが、どんな技をすればよいかの情報がなかったり
ヨーヨーが壊れていたりして、2009年からヨーヨーの存在を忘れていました。
競技ヨーヨーにのめり込んだ転換期は2013年にあります。
その時私はお小遣いがあり、自分のために何かを買いたいと思っていました。
お小遣いが無限ではなかったので、遊び方が無限にあって、値段が高くないものがいい。
その条件にピッタリハマるものといえば、ヨーヨーでした。
そして、ついにヨーヨーと再会し、今度は離れられなくなりました。
TAKA:復帰のきっかけは子供の頃には自由にならなかったお小遣いで
なにか買おうと思ったときに不意に思い出したヨーヨーだったんですね。
ネットも普及して、情報がたくさんある中で昔のイメージでヨーヨーに出会うと
自分の知らない進化したヨーヨーを見つけてしまい
楽しそう、と思って復帰する流れもよく話で聞きます。
CSW:最初に買ったヨーヨーはmagicyoyoのT10でした。
金属製のヨーヨーはプラスチック製のヨーヨーよりも
使いやすく耐久性があると思っていましたが、それは全くの間違いでした。
バインドの技術がなくヨーヨーをうまく使いこなすことができずにしばらくして壊れてしまいました。
(TAKA注:初心者のうちはプラと同じ感覚で開け締めをしたり、不意に投げたときにすっぽ抜けてぶつけたりと扱う技術が伴わないと得てしてメタルのヨーヨーは壊れがち)
しかしそのヨーヨーでカミカゼ、ローラーコースター、ボヨンボヨンなど
基本的な技を習得し、自分にも上手にできることがあるんだと実感して
とても満足していました。
2014年2月、もっといろいろなヨーヨーの遊び方を試してみたいと思い
5A用のサイコロと、初めてのオフストリングヨーヨーとしてアデグルの
デネブαを購入しました。
最初は1Aや5Aの選手になりたいと思っていましたが色々試した結果、
サイコロのコントロールが苦手で、オフストリングの大きなヨーヨーのほうが
うまくコントロールできることがわかりました。
なので4Aにもっと集中するようになりました。
Taka:いろいろ試した結果、自分にあったスタイルをついに見つけましたね!
台湾では野球クラブのような感覚でディアボロがあって
多くの子供達がディアボロに親しんでいるそうですがそれの影響はありましたか?
CSW:実はうちの学校ではディアボロはやっていなくてヨーヨーをマスターした後に
ディアボロをするようになりました(笑。
なので自分のディアボロの動きはヨーヨーから来ています。
その年の8月。
台湾ヨーヨーコンテスト・ジュニア部門に初めて参加しました。
9人の参加者がいて、私は9位でした。
ステージでのパフォーマンスは最悪でしたが、それでもTYYC2014の会場で
みんなと一緒に参加してパフォーマンスできたことが嬉しかったです。
来年のTYYCでは、ROCで初めて全国大会のチャンピオンシップ部門に出場します。
私は1Aと4Aの部門に登録しましたが、4A部門の決勝戦にしか参加できませんでした。
4Aの基本的な技を教えてくれたLin Jia-Her さんに感謝。
それ以来、4Aに力を入れて行くようになりました。
4Aの練習中には、AdegleyoyosのオーナーであるHuang Lin-Kai氏とLin Jia-Her氏が
たくさんのフリースタイルの作り方にアドバイスと予備のヨーヨーのサポートをしてくれました。
彼らがいなければ、今の私はありません。
また、台北シリーズ(台湾のローカルコンテスト)のおかげで
フリースタイルの構成の作り方やパフォーマンスの経験をたくさん積むことができ
それぞれが私の人生における最高の宝物となっています。
1年間のトレーニングの後、再びTYYCに出場しました。
その時は、4A部門で3位以内に入れると思っていたのですが、ダメでした。
迷いましたが、諦めずにヨーヨーを続けました。
さらなる高みに行くために、トリックの多様性を高めるためにたくさんの技を学び
また同時にヨーヨー自体を楽しみながら続けていくことで
よりプレイヤーとしても成長することができました。
2018年のTYYCでついに4A部門で全国チャンピオンになることができました。
人生で初めての”1位”でした。そして親も世界大会に参加することに同意してくれました。
海外の選手と競技をして、一緒に競技外でも、遊んで行くことを楽しみに一生懸命練習し
大会を何から何まで全力で楽しみきりました。
世界大会では4A部門の5位になることができました。
台湾人としては歴代二人目の4A決勝進出者で
全部門を通して5位というのは今までの中で最高位となりました。
WYYC2018の後、私はより自信を持ってAP2019に参加するためにシンガポールに行きました。
いろいろなことがありましたが、それでも素晴らしい経験でした。
インスタグラムで何年も前から知っていた友達に会ったり
4Aを始めた時からのスーパーヒーローに会ったりしました。
また、4A部門では2位になりましたが、これはAPにおける台湾人の最高ランクです。
TAKA:波乱万丈の成長記録ですね。最初からうまく行かず、でも諦めずに食らいついて
続けることで着実に結果が出てきているのがよく伝わります。
APでは現場では入賞できなかったのですがあとでスコアの集計ミスが発覚して
2位になっていた、ということがわかりました。
機種紹介のときもコメントいただいていますが
プレイヤーとして成長する中でフリースタイルの構成について
気をつけていることなどあれば教えてください!
文:私のフリースタイルは、主にエクスキューションと快適なテンポを重視しています。
良いフリースタイルのためには、エクスキューションが最も重要だと思っています。
ミスが少なく、実行力が高ければ、ステージ上ですべてがよく見えるでしょう。
次に重要なのはテンポです。私はステージでミスをするとすぐに不安になってしまう人間です。
不安になるとミスが重なりすべてが台無しになってしまいます。
ステージ上で気持ちよくフリーをするためにテンポよく
流れを作ることが大切だと考えています。
そのためにはたくさんの練習が必要で、丁度いいバランスを見つけることが必要です。
トリックのスピード、トリックの長さ、ヨーヨーの残りの回転数などを含めて
テストとアップデートを繰り返し、最高のルーティンを見つけるのです。
TAKA:実行力とテンポは同じ方向性の大切な要素で
フリースタイルは1つづつの破壊力よりもフロー(流れ)のほうが実は大事で
という話は20年前から私自身も、ずっと色々なところで言い続けてきています。
フリースタイルの中で優先順位をつけていく必要がある中で、技の凄さやオリジナリティにこだわるのか
全体を通した作品としてのフローを1塊としてみるのか
いろいろな考え方があるかと思いますがクリッカーというルールではフローが
途切れないほうが結果には反映されやすいと考えています。
CSW:もう一つの重要な要素は音楽です。
私は歌詞のない曲よりも、歌詞のある曲を使うことを好みます。
歌詞があることで、自分の言いたいことを観客に伝えることができ
自分のフリースタイルをより良く見せることができると考えています。
私の2018年のWYYCや2019年のAPのように、この2つのフリースタイルは私のスタイルをよく表していると思います。
私の話を聞いてくれてありがとう、私の名前はCheng Sheng-Wen、通称CSWです。
台湾出身の4Aプレーヤーです。私の話と物語はこれからも続きます。
これからも、より良い人間、より良いヨーヨープレイヤーになるために、学び続け、練習し続けます。
今の状況から海外に行くことがしばらくできなくても
でも、またみんなに会えることを楽しみにしています。
TAKA:最後は綺麗にまとめてくれました。ありがとうございます!