パノラマ発売記念インタビューのパート2です。前回の記事はこちら
大会で勝つ、チームに所属するに続くヨーヨープレイヤーの夢の1つでもある、シグネチャーモデルを作る楽しさについてどんなアプローチで今回の企画が進められたのか伺いたいです。
シグネチャーの進め方って色々あるでしょうけど、今回シグネチャーの話進めていく中でありがたかったのが
「お前は全部自分でやりたいんだろ?私達の工場で出来る範囲であれば完全に任せるよ。」
と最初に話が来た時点で一任してくれた点です。
さらっとお答えいただいたんですが、これって実はかなりすごいことです。
ワンドロップが自社工場で、やり取りをしているDavidが決定権を持っているオーナーで、さらに図面を理解して製品を作ることが出来るという環境があるからこそ、試作数にも制限なく納得行くまで作り込めます。ほとんどのヨーヨーブランドがファブレスで、デザインとマーケティングに特化していて生産は”外注”なので試作にも費用がかかります。そのため、最近では試作をせず、図面で確認していきなり生産、というケースも出てきているようです。
あと「お前は全部やりたいんだろ」っていうところにタカツさんのキャラクターを良く理解しているDavidとの関係性も見れ取れて、プロ契約の”商売”上のつながり、というよりはパッションでつながった仲間、という感じがしていいですね。
こだわりを強く持った機種を開発したいプレイヤーにとってはこれ以上の環境はない、といった感じがします。反面、オーナーの気分次第?みたいなところもあって気分が乗ったら一瞬だけど気分が乗らないと数年間があくというのもある意味魅力と捉えられるかもしれません。
全部自由って逆に大変ですよね。
材種も形もサイズも全て0からスタートして自分の”好き”だけで構成されたヨーヨーを生み出せるんですからね。
ただこれは夢の様な話ではあるんですが、0から多様な選択肢を持ってスタートというのは創造の過程で最も高い難易度の部類かと思います。
例えるなら、
真っ白なキャンバスが与えられて、それに自分が最高だと思える絵を描いてね。
鉛筆だけでもいいし、色鉛筆使ってもいいよ。水彩でも油彩でも問題ないよ。
但し商品化するしそれが君の代表作になるからよろしくね。
って。笑
まあ燃えますよね…。
試作に関しては回数の制限自体はなかったのですが、
出来たものに対して「私の思ってたイメージと違うやり直し!」というのを極力無いようにしました。
作り手側に対しての敬意を払う意味もありますし、そういった部分が物を作るうえで作り手側の熱量にも繋がってくると考えますので図面段階での熟慮検討をきちんとした上でプロト制作に入りたいなと。
これは友人とCADを起こした時も共通で言える事ですが。
その点もあって個人的にモックアップを制作した部分もあります。
その甲斐もあってか1stプロト~2ndプロトの時点での修正のやり取りは大変スムーズでした。
1stの図面に対して赤鉛筆で赤チェックと少しの文章での要望の記載でDavidとShawnは全てを汲み取ってくれました。
余談ですが2ndプロトに決めたよと連絡を入れた際の返信が、
「やっぱりね、そうするって解ってたよ。我々としてもこれは自信作だからね。」
と返信があり、熱量共有できてたんだなと嬉しくなっちゃいました。
デザインのやり取りのディレクションって指示出す側も発言に責任があって、こんな感じの見てみたいからとりあえずよろしく、といって指示を出すと仕上げる側は意図を汲もうとして全力で仕上げるのでそれをボツ(もしくは大幅修正)となるとやる気にも直結するし、そもそもの指示は何だったのかという信頼関係にも影響します。そこらへんはコミュニケーションのとり方や距離感にも拠ると思います。
”共感”って結構大事で、シグネチャー作りのご醍醐味だと思います。考えていること、伝えたいことがものを通じて伝わって、シグネ主から作り手に伝わって、それを理解したらヨーヨーを通じて、ユーザーにもきちんと伝わるものができてくるかもというワクワクしかないですね!
前置きが長くなってしまいましたが、今回はカラーについて掘り下げよう、と考えていたらパッケージにも気合が入っていてカスケイダーズというムーブメントを起こされていたときもそういう遊びされていたなと思い、これは掘り下げないと、というわけで今回は本体以外の部分の見た目の”デザイン”について聞いてみました。
タカツさんデザインのカスケイダーズロゴとパッケージ
極論で話すとフリースタイルもシグネチャー作りもヨーヨーを通じた表現、という捉え方が出来るわけで衣装、髪型、表情、ステージ上の立ちふるまい、動画の場合は絵作りにどれだけ意味とメッセージと説得力を載せられるか、というのが”勝負”だと思います。
ヨーヨーの場合、今回の記事のようなシグネチャー作りの背景や本体のデザインの説得力に加え、ここまで作り込んでくると、見た目の部分でのパッケージや”ロゴ”、ヨーヨーのカラーにも重要な意味が出てきます。
0からのスタートの”0”の中にはパッケージのアートワークも入っていたみたいで私がデザインしてます。
これは全く頭に入ってなかったんですがやってみると楽しい作業でしたね、製品版は下記の第三案が採用されてます。
第一案 2015年頃デザイン
大正~戦前頃の石鹸のパッケージをイメージしてデザイン。
当初ヨーヨーの名前はカナリア(仮)で進んでました。何故カナリアなのか?って聞かれると意味はないんで困っちゃいますが…。
この案は2017年に同名の曲がヒットしたのでボツ。
フォントの感じとかキャッチコピーの添え方とか戦前の生活用品のパッケージ感がでてて、
パノラマのコンセプトが凝縮されてる感じがして好きです。
デザインって洗練させてどんどんシンプルに、削ぎ落としていく作業になっていくこと多いと思いますが
スタートの時点の”全部のせ”に実は伝えたいコンセプトが詰まっているので
長いブログの記事書かせてもらいましたが、このカナリアのパッケージですべて伝わる気がします。
昭和の女性のアナウンサーの声でこのキャッチコピー読んでほしいと思いました。
使いやすい、持ちやすい、疲れない
豊かな発想力のお手伝い
普段使いの毎日触るヨーヨーで豊かなヨーヨー生活を送れそうです。
第二案 2020年冬デザイン
名前を変更してパッケージデザインを継続。
個人的にこのデザインに対しての熱が冷めてしまってたのでボツ。
最初からパノラマじゃなかったんですね!?
今更ですが
パノラマの名前の由来聞いてもいいですか?
パノラマの名前の由来は初期パッケージのデザインでもわかる様に、昭和の生活用品や家電的な距離感を作りたかったんですね。
ワンドロップはアメリカのメーカーなのでちょっと異国情緒の漂う渡来製品的な響きで。
他にも案として平賀源内的ネーミングも考えましたがヨクマワールみたいなしょうもないのしか思いつかなくてやめました。笑
当初のイメージとしては、シベリア(お菓子の)とかカチューシャとか。80年台だとポラロイドとかかな?
なんて思案してるうちにパノラマってちょっとダサくてカッコイイなと。
モダンなダサさというか。
意味合い的にもプレイスタイルの幅を広げるという意味も込められると。
それに英語にするとPanoramaでこのスペル少し弄ると…。
第三案 2020年春デザイン
昭和30年代~40年代頃の家電メーカーのロゴと昭和42年~昭和43年に放送された国民的特撮番組の某警備隊のロゴからインスパイアされたロゴデザイン。
当時流行したフラワームーブメント、スウィンギングロンドンを強調させたマーブル背景
フォントもオリジナルで制作してます。
ワンダバダバ♪世代の人には歌が聞こえてくる絵ですね。生活用品だったわかりやすさから
混沌としていろいろなことを想像してしまうパッケージになってきています。
第四案 2020年春デザイン
第三案のデザイン、フォントをベースに私の好きな空想特撮シリーズ第一作 某Qのタイトル画面をインスパイアしたデザイン。
インスパイアどころかそれっぽすぎるのでボツ。
普通デザインのやり直しって苦痛だったり、こだわりだしたらいつになったら終わるのか果のない作業で大変な感じですがもう完全に楽しんでやってますよね。
デザインするのも自分だし、ボツにするのも自分。納期は自由。
夢のようなデザイン作業です。これもヨーヨーの楽しみ方の一つですねぇ。
パノラマ自体、ワンドロップからでるヨーヨーなのですがシグネチャー主の思い入れと
プロジェクト遂行能力の高さでシグネモデルという枠を超えてしまっているワクワク感があります。
アートワークと本体設計とプロモーションとそれに伴うムーブメントと全部一人の人が考えてやっているので
(周りの力を借りているとはいえ)、スジが通っていてプロダクトとしての輪郭がはっきりしていてこの流れ好きです。
シグネチャーモデルでも一般的に、名前とパッケージとロゴデザインとヨーヨー設計者とスタイルとがバラバラなことがあるものもあるので。
メーカーメッセージとしてきっと、ヨーヨーブランドはなぜヨーヨーを作り続けるのかというようなことをワンドロップもずっと考えていて
中国産の安いヨーヨーへのフラストレーションはM1を出した頃からあってその中で活動を続けています。
そういう意味では今回のようなコラボはワンドロップxタカツさんにしかできない感あります
ワンドロップが町工場で、小回り聞く良さがあっての開発とタカツさんとの信頼関係が生み出した製品といういいかたもできるかと。
ちょっと前の日本の家電メーカーが持っていたような物作りのこだわりの見える製品というか。
そうですね、家電に限らずですがその頃って作り手の熱量が製品を通してからも伝わってきますね。
市場が求めてるからよりも、企画や作り手側の
どうしてもこういう物を作りたい、だってこんなものがあったら最高じゃん!?
という部分に魅力を感じたりしてるのかもしれませんね。
あとは現代の色々なものに言える事だと思うんですが、複雑化しすぎてる部分があるかと思います。
物作りって本来”作る人”と”欲しい人”の2者だけで成り立つんですが、現代は間に他者が入ってしまうんですね。(究極は全部自分でやるですが)
間に他者が入った方が確実に円滑で敷居も下がるんですが、伝言ゲームみたいに”欲しい人”の要望も”作る人”の拘りも薄まって伝わる気がします。
そう考えますと、ありがたい事にパノラマのプロジェクト進めるにあたりDavid,ShawnやCAD起こしてくれた友人とは近い距離間でやり取りができたと思います。
プロジェクトが進めば進むほど到達地点が明確になりそれを共有出来た感覚はあります。
国産ブランドの多くがオーナーの意向でトップダウンで全部行われているところに魅力があり、多くのアメリカのメジャーブランドはマーケティングとデザイナーとプレイヤーと工場が別部隊なので規模感は出せるけどスピード感や独特の魅力、ブランドのアイデンティティとなるとぼやっとしてしまう部分があるのだと思います。アメリカでもブティックヨーヨーと呼ばれる個人制作系ブランドが人気なのは個性が明確だからというところもありそうです。
そういう意味でパノラマは”タカツプロデュース” Powered by OneDropの明確なメッセージを持ったヨーヨーなので多くの人に手にしてもらいたいですね!
開封してパッケージを目にしたとき、手にしたとき、振ってみたとき、ふと日常にパノラマをおいてみたとき、いろいろな気づきをできる都こんぶのような魅力のあるヨーヨーです。
確かにアプローチとしてはonedropの工場とブランドをお借りしたブティックヨーヨーといった形の方がしっくり来る気がしますね。(笑 言われてみれば都こんぶって最初美味しいと思わないですよね、いや今でも美味しいと思わないですけど何故か手に取ってるという…。
今回、パノラマ発売にあたりスピンギア限定カラーを、とご提案いただき作っていただいたカラーのコンセプトについて最後に教えて下さい!
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[SGカラーについて]
Spingear限定カラーを考えるにあたり、Spingear Akiba店へ行くときの高揚感を表現できたら良いなと思っていました。
カルチャーゾーンのエスカレーターを上がり、3階に着いて2~3歩行くと右側にほんの一瞬お店の様子が見えるんです。
ヨーヨー談義に花を咲かせる人、一生懸命為ぶりをする人、所狭しと陳列されたヨーヨー達。 何度も見てる光景なのですが、行くたびに初めて行った時の高揚感、ソワソワ感を感じます。
そして私にとって同じ様な高揚感を得る場所が他にもあるんです。
それは野球場、特に人生で初めてプロ野球を見た東京ドームです。
丸の内線後楽園駅で下車し歩道橋を上って東京ドームの入口の回転扉からみる球場の様子と
Spingear Akiba店のエスカレーター脇から見える光景は何度足を運んでも年甲斐になくドキドキワクワクしてしまいます。
そう考えてると奇しくもSpingearと東京ドームに本拠地を置く某球団はイメージカラーが同じ事に気が付きました。(場所もちょっと近いですよね)
週末、東京ドームが華やかなオレンジで埋め尽くされる様をSpingear Akiba店に立ち寄る人々、
所狭しと陳列される商品と重ね、更に差し色に少しピンクを足して Weekend Stadium を考案させて頂きました。
お店を運営する側としてはこの上ないお言葉で感謝しかありません。野球好きな一面も持ちのタカツさんならではの着想とカラーリングですね。ブラックのアシッド(フェード)に赤xオレンジxピンクのスプラッシュと赤橙桃黒銀と5色の色が1つのヨーヨーに載っている贅沢さ。日常を鮮やかに彩る素敵なカラーリングとヨーヨーとなりそうです。スタジアムの熱狂も伝わってくる気がします。
コロナ禍で直接お会いできない中、DMのやり取りや途中からドキュメント共有でこのような形で文章を作ることができました。タカツさんありがとうございました。
またこの文章を読んでくださった皆さんもありがとうございます。パノラマというヨーヨーに込められた想いの一部でも伝わり、ぜひパノラマを手にしてその想いを共有していただければと思います。