メタル #スピンガジェット プロジェクト

スピンガジェットのスマッシュヒットを受け、気がついたことがあります。

競技のヨーヨーの部分のヨーヨーの楽しみが浸透しすぎていて、ヨーヨーを集めたり、ちょこっとカスタムしたり、出来ることの楽しさを上手い下手じゃなくてとりあえず動画をシェアしていくなどのライトな”周辺の楽しみ方”が新しい世代にあまり浸透していないということでした。

キャップの外し方がわからない、ベアリング化改造って?という多くの新しい愛好家たちがいました。でも最初はみんな初心者できっかけがあってその世界を知ればどんどん広がっていくのは皆さんご存知のとおりです。

元々スピンギアが得意であった様々なヨーヨーの楽しみ方を、スピンガジェットを通じて、皆さんと一緒に盛り上げていくことができて改めてヨーヨーの楽しさと様々な楽しみ方を確認しました。

大会があって、大会に向けて練習をしていくことは努力を伴いそれに対して達成感があるのでヨーヨーの楽しみの中でもわかりやすく、多くの人が楽しんでいます。

ただヨーヨー始めたての人や社会人になると競技中心の遊び方は難しくなり、またほとんどの人がそうだと思いますが、他の多くの趣味の中の一つとしてのヨーヨー、となると競技生活はハードルが上がってしまっています。

もっと気軽にヨーヨーに触れて楽しんでいこう、というスタンスとそれにあった商品開発をスピンギアブランドとして、ステップシリーズから継続してきたことが一つ成果になったのではないかと思っています。

そのような中で、プラスティック機種に関しては一通り出揃ったと思っています。次は入門用メタル機種です。ステップ3でメタルを発売していますがステップ2の置き換えで性能的にもステップ2と同等レベルなのでそうではない、きちんとしたステップアップになる機種を作っていきたいと考えました。

スピンギアが競技用ではなく、気軽にヨーヨーを楽しむものとしてフルメタルを提案するのであればどういう機種が良いだろうかと考えたときにいくつかの要件が出てきました。

1)メタルの恩恵を受けて”回転力のある引き戻し”が楽しく遊べる。簡単にバインドに切り替えできたらなおよし

プラスティック機種からバインドに移行するのも手ですが大人の場合、少し出来るので最初からメタルで遊びたいという人もいると思います。またスピンガジェットに比べ回転力のあるメタル機種は経験者であればスピンガジェットを飛ばしていきなりメタルガジェットから復帰するということも可能になるかと思います。その場合はバインドよりもワンクッション、引いて戻る遊んだことのあるヨーヨーらしい動き、というのを挟んである程度慣れてからバインドに行くほうが楽しめる幅が広がると考えています。

2)フルメタルはカスタムの余地がなくて少しさみしい。キャップ交換などちょこっとでも良いのでカスタムできないだろうか

3)できるだけ低価格で届けていきたい

以上の要件を満たすために、企画としてできたのがスピンガジェットのメタル化でした。

かつて多くのベストセラープラスティック機種がアップグレードとしてフルメタルバージョンが作られるということが行われてきました。

コレクションモデルとしても定着しつつあるスピンガジェットにメタルバージョンが登場することでエントリーモデルからのアップグレードとしてわかりやすいということと、懐かしいけど新しいという絶妙なこのデザインをメタルに置き換えたらどうなるのだろう、という製作者側の見てみたい、という気持ちもあり方向が決定しました。

1)直径、幅、重さはスピンガジェットに準拠する

2)キャップはもちろんプラスティックのスピンガジェットのキャップがハマる

→フリーハンドALがフルメタルキャップを搭載したのでメタルキャップとしてのヨーヨーもオモシロイと思ったのですが気軽にカスタムできるものではなく、またキャップ自体に重量があるのでキャップを外した状態の本体で遊ぶと軽すぎて使いづらいということが想定されました。またキャップ製作コストと本体製作コストがほぼ同じ!という見積もりで単純に2倍のコストとなってしまうので低価格帯という範囲からそれてしまうということも理由です。

3)ベアリングサイズはD

多くの初心者引き戻しメタルヨーヨーがサイズCの薄型を使い、バインド化するときにフルサイズを使っています。これ自体は構造がシンプルになる上、汎用で多く出回っている規格品なので手にはいりやすさの面からも初心者に優しいと言えます。ただしっかりヨーヨーを投げる動作のできない初心者にとってはサイズC薄型は下手したらプラスティックベアリングよりも回らない初心者に優しくないベアリングになっています。サイズCは滑りが良いという部分で評価されていますが、直径が大きく、回転力という部分では決してメリットのある形ではありません。偶発的にヨーヨージャムのパトリオットに採用されたことでネジはミリ規格でベアリングだけがインチ規格という歪な組み合わせのまま標準化してしまい、汎用パーツが出回りすぎたため多くのブランドが乗り換えること無く規格としてスタンダードになってしまっています。業界としてもサイズC以外のベアリング規格に目を向けてヨーヨーの設計について根本から考えていくべきでは?という提言も少し込めてみたいと思っています。

上級者が好む引き戻しヨーヨーにも多くサイズCが採用されていますがこれは固定軸でやっていたような動きをしやすいサイズというメリットから採用されていて、初心者にとっての投げ出しの気持ちよさや回転力ということは考慮されていません。

直径56mmというサイズに対してサイズDはスピンガジェットのプラスティックベアリングともサイズが似ており、投げ出しの感覚が近くなったり、初心者のスリープ力でも十分に回転するであろうという推測をしました。

またサイズDには外径と内径が同じで、幅が4mmのものと5mmのものが市場に存在します。4mmを引き戻しのギャップにして、5mmをバインドの仕様にできればベアリングの交換だけで引き戻し↔バインドの切り替えができてなおかつ、回転力と投げ出しの気持ちよさが担保できるという目論見です。サイズAを選ばなかった一つの理由でもあります。

以上の機能を満たしたヨーヨーを設計し、3Dモデルを作成しました。

図面をひいてすぐに、試作を行います。

試作品が届いて最初に投げた印象としてはスピンガジェットだ、、、でした。サイズも形も同じなので当たり前といえば当たり前ですが4mm幅のサイズDを使用してギャップも狭めだったので投げ出しや戻ってくるときのフィーリングも良いところを引き継いでいました。今までにない、

リジェネ楽しいメタル機種

爆誕の瞬間です。ハイパーヨーヨー黎明期の、伝統的なヨーヨーの遊び方ができるメタルとも言えます。

キャップも交換できるのでメタルヨーヨーですが自分好みのカラーにカスタマイズできます。またキャップを外しても約60gと十分な重さがあるので初心者のうちはキャップ無しで引き戻しのほうが安全に遊べる重さになっています。個人的にはキャップ無しの軽いフィーリング大好きです。

幅5mmベアリングをつけたところ、バインド化もできたのですが、4mmと比べると、1mmのギャップの違いで元々は引き戻しにギャップを合わせていたので滑りが良い、というところまではいっていませんでした。ただ練習したての頃はギャップが広すぎるとバインドがかかりにくいということもあるのでこれはこれで段階を踏むという意味ではよいギャップかと思いました。

競技者向けのフルギャップに関してはシムを用意することでギャップ幅を広げることができそうです。完成されたフルメタル全盛の中、シム自体、懐古主義と取られてしまいそうですが、自分でパーツを使ってヨーヨーの状態を変更できる、というのはヨーヨーの技だけを楽しむのではなく、ホビーの楽しみとして自分好みに調整の余地があるということで、大切だと思います。

テメら全員シムいれんぞ、というネタが通じない世代が増えているのも少し残念です(完全に懐古主義)

またサイズDのヨーヨーの設計の悩みですが、内径5mmに対してアクセルが4mmなのでベアリングロックの部分の厚みが0.5mmしか取れず、開け締めを繰り返すことでロックごともげてしまう可能性があるという問題がありました。

そこでサイズD至高をブランドスタート当時から掲げ、現存するブランドではサイズDの機種を一番リリースして知見もあるであろうシュトルムパンツァーのオーナーにアドバイスを求めました。

やはりサイズDの4mmアクセルは脆いので素材として硬い7075を推奨されました。しかし7075はコスト増になり、また色の部分で制約が出てしまうこと、初心者モデルにいきなりプレミアム感ある素材を使ってしまうとステップアップしたときの楽しみが減ってしまうのでは?などの理由により見送られます。

次に頂いたアドバイスが5mmの内径にピッタリあうアクセルを作って軸でベアリングを支える方法、でした。一部の4A機種では採用されています。汎用のホーローネジではないアクセルを作るのでコストは増えますが、リムーバーが存在しないサイズDのベアリングロックを固くしてしまうとベアリングを交換することが大変ということを回避できます。理想は手で交換できるレベルの気軽さでネジの開け締めでも本体の摩耗がそこまで無い、という状態です。多くのヨーヨーがベアリングロックを使って精度を出しているので競技用モデルに比べると”ブレ”が発生してしまう可能性がありますが初心者にとってヨーヨーのブレはプレイに影響がない範囲のものであればむしろヨーヨーがどれくらいの力で回っているかが振動を通して伝わってきたりそこまで繊細なコントロールを必要とする技をするわけでもないのでエントリーモデルとしては問題ないだろうという判断をしました。

図面上はとってもいい感じです。現在試作品の仕上がりを待っている状況です。

無事に発売開始しています!お買い上げはこちらよりどうぞ!