中国のおもちゃ流通はまだ問屋(卸売)が活発で、玩具店や文具具店の店主が必要な分を買いに来て、袋に入れて持って帰るという市場的な感覚が成り立っています。なので問屋街でも誰でも出入りできるし、商品も購入できます。買う数が少なかったり一見さんだと定価になるのでそこは市場の駆け引きも必要です。
また問屋も各ブランドの販売代理の形式を取っているところが多く、一つの問屋で全社の商品が揃うというよりは、アウディはアウディ専門の問屋、というような住み分けになっています。なのでいろんなヨーヨーを買おうと思うとヨーヨー専門の問屋というものは存在していないので、各お店をはしごすることになります。逆にボールやスポーツ用品は商品カテゴリーでショップが成り立っているのでブランドで勝負しているおもちゃならではなのかもしれません。
というわけで玩具中国最大手、株式の時価総額でもおもちゃ業界世界一、二位を争うアウディの問屋へ
1階はおもちゃ、2階は何か別のものの問屋ビル。アウディのロゴが見えます
この奥がアウディの代理店。アウディのおもちゃが一番売れているおもちゃなので実質一番売れている代理店の入っているビルでもこんな感じ。秋葉原のガード下の雰囲気に近いです。問屋の子どもたちも遊びながら親の店番に付き合ってるので殺伐とした雰囲気や怖い入りにくさは慣れてしまえば無いです。
もう一つある大きな問屋街は数年前に火災で焼けて、建替え中、路上にダンボール広げて卸業務を継続していたのはいい思い出。新しいビルで始まったはずですがすでにカオス感は復活してます。
アウディのヨーヨー棚。こちらはディスプレイで実際はここから商品とっても良いですが、下の写真のように
地面に直置きされたダンボールから必要な個数を抜いていくスタイル。小規模な小売店が市場感覚で仕入れていくスタイルにはピッタリ。そして個人のコレクターが各色1個で買うのにも便利。
ヨーヨーが爆裂売れているときは地面おきのダンボールの数も増え、また常に人が商品を探している状態になります。中国行きだしてからヨーヨーヒットには何回か遭遇してますが、品薄になるほどのブームは見てないのでここにあるダンボールがなくなるほどのブームはちょっと想像できないです。1日に何十万個と作れてしまう生産能力とスピードで市場のニーズに対応しているので新鮮な食品的な感覚で品薄は全力で作り出さないスタイルかと思います。
アメリカや日本だと発注から入荷までのタイムラグが平気で45日あったりしますが、国内で作っている中国の場合、市場の敏感なニーズに対応して生産数調整ができそうです(とはいえ、各社ヨーヨーブームの前には何十万個~数百万個もの在庫を積むので尋常ではないです)
そしてヨーヨーのプロモーションが始まるとどこからともなく出て来るデッドストック。前回の5はもちろんあるのですが、4のデッドストックも別の場所に並べてありました。
ヒット連発で来ている火力少年王シリーズの中でも闇歴史化している4。ストリートダンスをフューチャーし、踊りとヨーヨーのフュージョンを目指したフリースタイルバトルで決着をつける、とコンセプトは素晴らしいのですが踊りとヨーヨーがバラバラだったり、最終回、延々と踊りだけ見せられるというヨーヨープロモーションを忘れたやりたい放題の構成でした。ダンスをヨーヨーに取り入れようとするとダンスのアクションとヨーヨーの動きが切り離されてしまうという問題点がドラマにもそのまま意図しない形で再現されています。両方を硬度なスキルで結びつけるスタイルは当時はまだ早過ぎたかもしれません。
最終回は画面がチカチカしすぎるので日本では放送できないクオリティです。そろはむも登場してきて中国のヨーヨープレイヤーのレベルの向上も感じれる作品でした。
ヨーヨーは売れなかったかもしれませんが、火力少年王シリーズでは最後となったライブアクションバージョン(アニメではなく、実際の人が登場するもの)なので1Aや4A,5Aの競技用ヨーヨートリックが作中にバンバン登場するので言葉がわからなくても見てて楽しいかと思います。3Aがあまり出てこないのも時代を反映しています。
実写特撮がとにかくコストが掛かり、また役者にヨーヨーを教えたり撮影期間がかかることが理由で最後になってしまいました。ヨーヨープレイヤーが登場してフリースタイルをしている部分もありますがいくつかは子役の子がヨーヨーを練習して披露しているパートもあるはずなのでそんなところにも思いを馳せてみてもらえれば。水泳のドラマなら当然役者も泳げないといけない、社交ダンスのドラマなら社交ダンスのレッスンも受ける、そんな感覚で”プロとして”ヨーヨーの練習をする現場があったというのはヨーヨーの歴史の中でも記憶しておきたい出来事です。
3までにあったヨーヨーの熱さと青春ドラマというわかりやすさにダンスという要素が加わったことでカオス化し、またターゲットの子どもよりもドラマ視聴に耐えうる年齢層が若干高めだったので、ヨーヨーの売れ行きも芳しくなく、ただ大ヒットしてきた2,3の続編ということもあり、問屋の期待は大きく、大量に市場に商品が投入され、そのまま固まるという状況に。というわけでパッケージはいたんでますがヨーヨーは良品の状態でいまでも市場で眠ってます。殆どが時代遅れのヨーヨーになってしまってますが、この写真の中だと唯一?魔鈴だけはいまでも楽しい素晴らしいヨーヨーなので機会があれば振ってみて下さい
また1-3はほぼどこかのブランドのデザインをオマージュしたもので元ネタが分かるものが多かったのですが、この4からはヨーヨーデザインもオリジナリティがでてきていて、規定の路線をドラマでも、製品でも打ち破ろうとした意欲作でした。
ビックヨーを使いやすいサイズにした感じの直径84mmで、オフストリングよりではなく、大きい1Aヨーヨーのデザインなので1Aヨーヨーとしても無理なく遊べます。またオフストリングにしたときは大きさがあり、また軽いので落としてもあまり壊れる感じがせず、気軽にオフストリングにチャレンジできる機種です。古いヨーヨーらしく、シムが複数枚付属するのでシムでギャップを調整できる機構も懐かしいです。
マーカスのシグネチャーも発見。国内だとマグナムやアレススターは入荷しましたが廉価版になるこの機種は入荷しませんでした。今回は1つだけしか発見できなかったので商品としての入荷は見送りました。
4の失敗を受け、5は日本的な鉄板アニメとなるべく方向転換をし、中国国内アニメの雰囲気を払拭したキャラデザインと世界観でストーリー中心の展開で作成されました。ヒロインが可愛くなり、萌え要素を入れようとした形跡も伺えます。中国政府の検閲があるという制約のため表現的には素足がだめでタイツならいい、みたいな不思議な基準と中国の作画レベルでどこまで製作者の意図通りになっているかはわからないですが、、、
メガネくんとアンドロイドの恋にも似た友情などいままでの火力少年王にはなかったエッセンスが詰め込まれてます。ヒロインキャラを集めての寄り道回があるなど構成も日本的な要素が色濃く反映されてます。
表に裏に、中国への人材流出とノウハウの流入は玩具業界でもおきていて、有名玩具メーカーをリタイアした人が中国で第二のキャリアを歩み出していたり、日本の会社が名前をのせずにキャラクター設定やストーリーを手伝っているケースなどあって、レベルの高いところは、中国のアニメのクオリティーも日本と遜色ないところまで来てます。ただ、表立っての協業は日本よりも韓国の会社とのものが多い気がします。特に3Dアニメーションは韓国が圧倒的に優勢です。文化的に鎖国をしているので日本のアニメが流せないという理由で、中国には中国のフェイスブック、ツイッター、などと言われる独自のサービスが有るように中国には中国版ガンダム、仮面ライダー、プリキュアなどカテゴリーとしては影響を受けていますが、模倣のレベルを超えたオリジナリティのある作品も増えています。逆にアニメがおもちゃを売るための手段になっているケースも多く、ストーリーなどなく、3Dモデリングされた玩具が延々と戦うだけの作品と呼べるのか微妙なものも多く存在し、玉石混交となっています。内需が巨大なため、玉石混交の数が半端なく多いのもさらに中国市場のカオス感と見通せなさを作り出しても居て興味深く見れるところです。中国のおもちゃショーに行くとレベルの差は歴然で、昭和50年台の偽ガンダムクオリティーから2017年最新作まで時空を超えて、一つの場所、同じ空間、同じ時間に存在しているのが中国の懐の深さだと思います。
火力少年王の歴史を見るだけでもヨーヨーの歴史だけではなく、中国の映像作品の発展、また当時のどんなドラマやアニメに影響を受けているかが見えたり、文化的な開放と発展の様子も見えてきます。
と前置きが長くなりましたが、こちらの2機種を買い付けてきました。ヨーヨージャムが正統進化していたら、という理想的なヨーヨーシリーズ。
シリーズ5からはヨーヨーが完全競技寄りになっていて、フルメタルも含めてそのまま世界大会に出れるレベルにまで一気に上がっています。また中心部分にハブスタックやLEDを装着できる玩具メーカーらしさも残っています。
火力少年王5は学園中心の第一部と精霊を中心としたファンタジー展開になる第2部の構成で、ヨーヨーもそれに合わせて展開、進化していきました。
そして現在展開中のシリーズ6作目
今回はハズブロとタックを組んで鳴り物入りで登場してきたブリージングチームのシリーズのはず(アニメ全部確認してないのですが)。世界化を目指したキャラクターと世界観でしたがアメリカでは受け入れられず、プロモーションとしては失敗してしまいました。
海外ではエントリーモデルから中級まで一気に展開していましたが、中国では”肩透かし”となるようなキーリールタイプのヨーヨーに特化した展開。これはヨーヨープロモーションを当て込んで便乗しようとしていた他社が唖然とする展開で狙ってそれをしたのかはわかりませんが結果としては市場がざわついてアウディの本来の狙い?を読めていない会社は今回のヨーヨーは売れてない、という評価を下していました。
ヨーヨーの機構自体は昔からあるヨーヨーボールで、キーリールのようにバネが内蔵されていて、伸ばしたら自動で戻るという機構をそのまま”ヨーヨー遊び”に応用しているだけです。そこに”金属リム”やシークレットの要素を入れてきたあたりがアウディの変化球
スマホのアプリともバッチリ連携してます。キーリールヨーヨーに特化した技リストや動画もあって思いの外きちんと作り込まれています。
また指につける機構としてシリコンの柔らかいリングが付属していて指がきっちり閉まる構造なので、ナイロンの太いひもですが、安全性も確保されています。
なのでヨーヨーできないユーチューバーの人でも簡単に遊んでいる動画が作れてしまいます。(スリープはしないのでサムネイルは合成ですが)
ヨーヨーをしている人は往々にしてこの手のヨーヨーもどきを軽視しがちなのですが、子どもたちがネットやスマホのゲームに夢中になり、課金も進んでいる現象が中国でもおきています。その中でアニメで見たヨーヨーの動きを変身グッズ感覚で簡単に体験できるツール、というのはとても大切で、子どもたちがヨーヨーと名前のつくおもちゃにくじけないで”投げて取る”練習をするのには最適です。特に戦隊モノや仮面ライダーのターゲットになる4-7歳の子どもたちはヨーヨーは遊ぶことはできないですがヨーヨーのアニメを見るとヨーヨーが欲しくなる、という中でキーリールヨーヨーは最初に手にするヨーヨーとして、次のステップアップを狙う展開に持っていけます。
おそらくハスブロがヨーヨーを取り組もうとした時の最初のコンセプトがヨーヨーの変身グッズ化であったはずで、誰でも買えば遊べてしまう遊び化(スキルトイの否定?)はヨーヨーのスキルトイ化に突き進むアウディ側からは出てこない発想でコラボレーションだからこそ生まれた発想かと思います。玩具メーカーとしては難しいものを売るのではなく子どもたちにお金さえ払えば遊べる手軽なおもちゃを提供するのがトレンドになっています。
個人的にはアニメを見てがっかりしたヨーヨーをボールのように上から投げつけるというアクションが完全再現できるのがツボです。
(Yo-コンドーというテコンドーとヨーヨー混ぜたコンセプトは許せてもヨーヨーはきちんと投げてほしかったというのが最低限のヨーヨーアニメとして求めたいクオリティでした。)
あえて子供のおもちゃ感を出したことで、世代の入れ替わりも促せます。低年齢の子どもたちがヨーヨー的なおもちゃを振り回して遊んでいる中に、高学年の子どもたちは飛び込んでいけないでしょう。
ヨーヨープロモーションをしていく上の一つのディレンマがスタートラインが同じでないためにブームを演出できないというところにあります。97年のハイパーヨーヨーブームが空前絶後のヒットになったのはコカコーラ世代が途絶え、大人も子ども同じスタートラインに立って物事がスタートしたという側面もあります。それはエクストリームけん玉の流れも同じで、当時はみんな”ワンチャン”あるかも?という中で切磋琢磨して遊んでいました。いまのように競技層がしっかり出来上がり、年齢が若くても競技プレイヤーがいる状況では、僕らのような競技ヨーヨーを普及している側の立場ではなく、玩具メーカーの立場としては難しい存在になります。ヨーヨーが10年に一度ヒットしている説(最近は途絶えてますが)というのも子どもたちの層が一回りしてヨーヨーが新しいものになった世代が中心になってヒットするためです。
ヨーヨーは練習をすればするほどうまくなるおもちゃです。ただメーカーとして販売をする側からするとイベントなどをしても突出した子どもが大会の上位を占め、これからやろうとする子どもたちのやる気を失わせてしまうのは得策でありません。また販売を維持するためにはこれもスキルトイの遊び方とは矛盾していますが全員がハードル低く、できるだけ”ゆっくり”とうまくなっていくのが理想的な市場です。技がうまくなる楽しみなしには次のヨーヨーも売れずまた遊び続けようという気持ちにもならないですが、逆に階段を駆け上がる勢いでうまくなってしまうとすぐに飽きてしまったり、メーカーが打ち出すステップアップの段を飛ばして、商品も売れなくなるという結果になります。
キーリールのヨーヨーは低年齢の子どもにとっては練習をすればそれなりに技もできるようになって、達成感もあり、ヨーヨーに対する難しいという先入観を取り除くツールとして活用され、スタートラインを揃えて次のヨーヨー展開をしていく、というのは推測だけではなく、キーリールヨーヨーのパッケージの裏に次のヨーヨーはこれ!と明示されていて、とりあえず一番安いのを買った子どもたちが着実に登れる階段を要しています。アウディxハズブロのときよりも階段を細かく、用意してきていて、2018年のWYYCの開催に向けてピークを作るのかどうかは定かではないですが、今年年末から来年にかけてヨーヨーをじっくり育てていこうというアウディの静かな決意を感じました。市場がその意図を汲み取らずヨーヨーだめだ、となっているところまで狙っているのだとしたら相当の策士です。(実際過去にも他社の裏をかく動きはしていたので邪推だけではないかもしれません)
海外での展開は失敗したようですが、中国国内向けにローカライズされたラインナップとプロモーションで今後の展開が楽しみです。
とここまで書いておきながら仕入の予定はないです(笑。要望があれば次の12月に検討します。
中の人になった気分でアウデイ社のプロモーションを振り返っていますが市場に出回るオープンな情報から推測し得る内容を分析を交えて個人の所感として書いています。そういうヨーヨーの楽しみ方もあるということで。
いつも問屋でポスターを貰っていたのですがついにパネルを、しかも2枚もくれる展開に。この時点では旅程を1/3しか終わっていない段階、この後深センと香港と移動していくのですが捨てるに捨てられず旅のお供に。
持って返ってくるまで気が付かなかったのですがまだ発売していない次の機種でした。
ビギナーヨーヨー史上最高傑作だと思っています。これを投入し、バインドプラ、金リム、フルメタルとステップアップしていくのでしょうか?5のときから1Aに特化し、他のスタイルを殆どフューチャーせずにきてるので、そこも楽しみです。
この後問屋を回って挨拶しながらヨーヨーの状況をチェック、大きなダンボールと袋3つという大荷物で問屋街を離れました。
次は中国のヨーヨー大家、KOBEとTakuto(白水)に会ってきました編