レクストリームストーリー第5話100Gの限界突破

レクストリーム物語 01 02 03 04

2014年:1月

image

自分で鉛シートでかなり使いやすいヨーヨーができましたが、どうしてもハンドメイドな為、個体差が生じてしまう事がやや頭を悩ませていました。ヨーヨーがぶれていなくても、鉛を付けるとぶれてしまう、という事も当然ありましたし。

ただこの重量ならば、プロダクトとしても間違いはないはずだし、製品にしてしまえば個体差はなくなるはずと感じていたので、製品化を考え始めました。

2014年:EJ-Aの夜,西八王子にて

image

今コレ使ってるんですよねぇ

image

重っ。でもソロハムやるならコレくらいがちょうどいいのはわかるけどリジェネやったら指もってかれそう、、、

で、どうしたいの?

image

レクストリームも発売から時間たってるしこれから勝ちに行こうとするとヨーヨーも更なる進化が必要かと。ただ新型作ってもらうことがすぐできるかわからないから、、、

image

OK,そこはジャムと付き合い長いから任せてよ。重さが必要でということであればアルミニウムの部分を真鍮に変えてみよう。あと既存の金型使えば金属の削りだしだけなら工場ですぐにできるからこれもハードル下がるはず。

いろいろ試しながら確信持てたら新金型で行こうよ。

image(ニヤリ)

実はレクストリームの真鍮ウエイト化は設計していた当時からやってみたかったことの一つでソロハムマシーン作るならアルミじゃないでしょ、とは思っていたので渡りに船!とうまくReiをのせつつ、製作の方向へ持って言ったのはここだけの話。社長に何回言っても却下されていたのでReiが言っているから!という後ろ盾を得てついに念願の真鍮リム化へ。

ただそのままアルミを真鍮に置き換えたら重過ぎるのはわかっていたのでどういう風に工夫するかは一回目はお任せ、という形でジャムの新発想に賭けてみました。世界大会まで十分に時間あったので、何回かサンプルのやり取りはできるだろう、というもくろみもありました。

image

僕自身は、アクエリアスのあと、リムがすぐ取れると不評だったスペシャルエージェントの最後のロットを全部買って、ソロハムの練習をしていました。真鍮リム+オフストリング機種のソロハムの相性は抜群です。個人的には未だに神機種です。真鍮リムのこの直径の回転力は得難い魅力です。

image

その後ソロハム機種として開発をしていたHGリムのオフストリングも壊れさえしなければ当時の機種の中ではかなり秀逸でした。重量級オフストリングは破損の危険がどうしても付きまといます。

(本題に戻して)

image

長谷川家で動画鑑賞しつつ、真鍮を使うアイディアが固まり、次の日帰宅後すぐにヨーヨージャムへメールを送りました。

▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

ファーストプロトという名の漬物石(岩倉玲氏命名)

image

2014年:2月くらい
image

ファーストプロトという名の漬物石が届く。その重さ110g…。しかもリムとボディの間にストリングが収まってしまうくらいの溝があり、これでは駄目だろうと長谷川さんを通し、ジャムにフィードバックをしました。

image

ヨーヨージャムは創業当時からの知り合いであり、業務パートナーとして取り組んできましたがことヨーヨー開発に関してはとても癖があり、ほかのブランドとは違うやり方が必要です。レクストリームを作ったときもそうでしたがなかなかこちらの要望どおりに仕上がらないことがあり、それが時にこちらの想定しない革新的な創造もしない構造だったりと良くも悪くもあります。ただレクストリームの開発に関してはとてもレスポンスがよく社長がサポートしたい、という意思は伝わりました。ファーストプロトもそうなるよね、という感じだったのでまぁ想定の範囲内。
やらかした感のあるプロトタイプから試作を重ねて良いヨーヨーに仕上げていくのは中々チャレンジする機会が無いので楽しいです。ただ自分の機種ではなくあくまでもReiの求めるフィーリングと性能を実現するのがミッションなのですが。ソロハムというゴールに向かっての機種開発は自分にとっても願ったりかなったりでした。

 ▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

2014年:3月上旬(練習といろいろ試行錯誤モード)

image

この頃はヨーヨー本体もそうですが、メンテナンスも色々と試行錯誤をしていた時期でした。重量をアップさせたことにより、糸が引っかかる力よりも、重さですり抜けてしまうパターンが多くなっていた為です。パッドか?オイルか?と散々悩んだ結果、使用ストリングをK-String(XL)へ変更しました。結果としてこの重量に対するストリングとしてはベストの感触を得ることができました。

通常のスタイルはもちろんですが、「きっちり回るけどちゃんと戻ってくる」が確実なセッティングになったことで、それまでは安定してなかった技もきまるようになってきたので、こんなビデオを作ったりもしましたね。

image

以前も書きましたがシーズンオフにきちんと”遊んでおく”ことはシーズンに入るとルーティンの繰り返ししかできなくなる社会人にとってはとても重要です。発想を広げたり新しいことをやるのはシーズンオフに限ります。

メンテについてはReiが当時、ヨーヨージャムのパッドを標準で使っていたときいたときはまじか、と思いましたが、ストリングやベアリング、パッド周りも結構大事です。

ヨーヨーうまい人ほどメンテナンスなどはつかいやすければいいやで、無頓着な傾向にあると思います。確かにつかいやすければいいし、1Aや4Aはあまりほかの部門に比べるとメンテの余地もありません。でもヨーヨー全般について知識があることに越したことは無いはずです。

将来的にはヨーヨープレイヤーとコーリアグラファー(振り付け師)、トリック開発提供、ヨーヨー開発、ヨーヨーメンテナンス(メカニック)、作曲、衣装、メーク、コーチくらいまで細分化された“チーム”で戦う時代が早くくればと思います。黎明期のヨーヨーはヨーヨーの技術だけではなく、セルフプロデュース力の勝負のようなところがあって、ヨーヨーがうまい以外の総合力を試されていた部分が多いと思います。海外に一人でいく力というハードルもありましたし。

▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

セカンドプロトはストリングカッター(表題:岩倉玲)

image

 2014年3月下旬(CJ3日前)

image

セカンドプロトという名の奇抜なストリングカッターが届く。

重量、フィーリング的には大体OKでしたが、リムが2素材ともに段差を作り出っ張っていたため、下手すると指と糸が切れる状態のものでした。これさえなければ割とCJでも使って良いかなーと思うくらいにはフィーリングはまぁまぁ良いものが出来上がっていたと思います。

image

プロトはプロトだし、クオリティーに関してはやさしく見ておいてください。このまま製品化することはありえないので。ただ届いたときの素直な感想としてそういうコメントになるのは理解できます。

作戦的にはいきなり金型をつくると後戻りできないので自社工場であるというヨーヨージャムの利点を最大限に生かして、既存の金型を流用しつつ、重量だけ旋盤で削りだして調整するという方法をとりました。製品ではないので時に危険な仕様のものが届いてしまうこともあるかと思います。この時期のヨーヨージャムの工場に行って失敗したリムやプロトをもらってきたかった、、、
image

((完全に余談ですが、工場に行くとパーツが転がっているので自分で好きな組み合わせを作ることができたりします。上の写真は発売されていないカラーの組み合わせを自分ではめ込みました。社会科見学で見学に行きたい工場NO1だと思います。あと失敗作のプロトが無造作に転がっているのでテンション上がります。アルミニウムの削りだし途中はイースター島の製作途中で放置されたモアイ像を髣髴とさせる、”時間を感じる”オブジェになっています。この後削られていくのだろうなというのが想像力を掻き立てられます。))

。。

。。。

さておき。こちらからリクエストしたテストプロトタイプだけの特殊構造、真鍮リム+POMリムという形も重量アップには貢献したので基本このラインで危なくないもので仕上げてもらう方向で一段階目のプロトタイプとして落ち着かせる方向に。これがうまくいけば新規金型を起こしていくのが良いだろうということで。 

 ▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

2014年CJ:4A部門1位、5A部門2位、エクストリームトリック賞

image

鉛シートバージョンのレクストリームで、初の大会出場となりました。構成特徴としてはソロハムを過去と比べ大幅に入れた形でした。結果1ミスはあったものの、ほぼ完壁な演技が出来たので、半年振りの大会演技としては満足できました。

 1番リスクをはらんでいたソロハムについてはトリックミスはなかったし、実戦投入することで検証もできたのはかなり大きかったです。本番に使って問題なかった、という経験は使用ヨーヨー選択において大きな意味を持ちます。

また、大会のステージ上では緊張で力みすぎたり緊張による手の震えがどうしても発生してしまうんですが、この際ヨーヨーが軽すぎると、上記の緊張に伴う体の反応が糸を通て、ヨーヨーに伝わってしまいミスを誘発してしまいます。しかし今回は重量アップさせたヨーヨーで臨むことによって、上記の影響を最小限に抑えることができました。

実は2014CJはここ数年の大会でも最も緊張した大会だったんです。世界大会での失敗を元に、練習法はもちろんこれまでのヨーヨーに対する考え方を再考し、この時点で約半年経っていました。その半年間の試行錯誤の成果を、どうしても出さなきゃいけない場だったからです。無様な演技では、その練習改善も無駄になる、くらいは考えてました。その緊張の中でも上手く扱えたので割と手ごたえを感じましたね。

image

さらっとかいてますが仮説をたて、行動して、その結果が出るというプロセスを完璧にこなした結果です。体系的なヨーヨーの練習方法の確立やコーチングスキルなどさまざまなノウハウになりえる経験をしていると思います。成功者が成功体験を語るとあまりにうまくできすぎていてそれ成功したから結果論じゃ、、、というのがありますが、事前に筋道を立ててそれに沿って計画通りに行動した結果が予定通りだったという当たり前だけど誰でもできないことをやっているのが優勝している人たちだと思います。

まずは想うこと、イメージしていくこと、そして足りないものを見つけていきなり優勝ではなく一つづつ課題をつぶしていくこと。そのロードマップが描ければ後は実践。そして結果となります。ただ闇雲にヨーヨーをしてもやみくもな結果が待っているだけです。優勝したいのか、自分ならではのパフォーマンスで観客を釘付けにしたいのか、気になるブランドのチームに入るためにアピールしたいのか、最初はどれかシンプルな一つの目標にしていくと良いと思います。

そういう意味でReiのような自分のやりたいことを盛り込みつつ、難易度も上げて、なおかつ勝ちに行くというのは明確に世界チャンピオンになりたい人以外にはまったく参考にならない、役に立たない目標設定ともいえます。

▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

2014年 JN:4A部門優勝
imageimage

image

プロダクトとしてやっと出来上がったReXtreme3.0を、JN当日に手に入れました。

数回のテストを経て、かなりフィーリングは改善されていました。振って数回ですが、普通にソロハムのコンボもサクサク通る感じだったので一安心でしたね。

(TAKA:軽々と遊んでますが特にルーティンをというわけでもなくアドリブでこの完成度、プロトタイプにしても使いやすさも十分だったようです)

実はディアボロ超先進国の台湾からも選手が来てたんですが、「これなら3つ回るから買ってくよ!」と言って結構な数を買って行ってくれました(笑)

あとはトッププレイヤーの友人数名に振ってもらったんですが、「なるほど玲君にはこれが合ってるわ」と言ってもらう事が多かったですね。実際今回の4Aトップ2は100g近くのヨーヨーを二人とも使用しているので、万人受けではないにしろ、一つの正解な重さなのかなと感じてます。

さすがに当日受け取ったヨーヨーで出場は無理なので、本番自体は鉛2.0で臨みました。でも3.0も予備として準備してましたね。

結果としては2連覇という形を残す事が出来ました。CJ同様、理論と実践を重ねてきた事が大舞台で通用するかどうか、非常にプレッシャーが掛かっていたので、本当に嬉しかったです。久々に「本番のステージ上で、思い通りにヨーヨーを掌握する」という感覚を思い出せました。

image
image

DuncanCrewJapanのKazuakiもTAKA-Modsのハヤブサ+バイパーXLウィングのModsヨーヨーを使っていてこちらも100g越え。二人ともジャグリングとディアボロを強くルーツに持つプレイヤーがディアボロと比べると軽いという感覚でオフストリングを扱うのは新時代の到来を感じます。かといって二人ともディアボロ風の技だけではなく、ヨーヨーにしかできない技もやるのですごいです。 

image

本番までの練習も大事ですが、当日の調整/過ごし方も自分の中でセオリーを見つけておくのはやはり大事ですね。

  • どのくらいの時間で自分のピークを持っていけるか?
  • 直前の選手が演技をしている際の過ごし方はどうするか?
  • 体力が落ち過ぎず、ちゃんと体も温まるギリギリのラインはどこか?

など決めておくと体的な調整もできますが、精神的にも安心できると思います。自分の「いつも通り」を見つけておくのは大事ですね。

 また今回のJN、もうひとつ収穫があったのは、5Aの井上琢磨君と色々話せた事ですね。

ちょっと許可とってないんで全部は話せませんが、彼の練習についての方法や考え方は、当然ですが凄かったです。そりゃあの演技出来るよねと。参考になったと同時に、とても良い刺激になりました。

 個人的には2014年世界大会は、2013年から1年計画で続いてきたリベンジの最終段階だと思っています。優勝出来るかはわかりませんが、ステージ上で100%を発揮する為に、やれるだけの事はやろうと思ってます。

(注:世界大会前の文章です。)

 あとはやはり社会人と競技者の両立は、変わらないテーマとしてちゃんと示せればとおもってます。ヨーヨーだけじゃなく、ディアボロやジャグリングの世界でも、「社会人になったら第一線は退かなきゃ。競技と仕事の両立はまず無理ですよね。」という言葉を、新社会人になった、それまで第一線で活躍してた方達から聞く事がります。業界によって事情やレベルはもちろん違いますが、そういった心配や諦めに対し、自分が大会に出る事で、少しでもポジティブな答え示す事が出来れば良いなと思います。ヨーヨー業界では珍しい一般企業からのスポンサーも継続してますし、なんとか結果を残したいですね。

実際ジャグリング業界でも、バリバリ社会として働いてるけど、第一線の技術をもって戦っている人はいますし。ディアボロでまさにトップを走っている、亀井君とかはすごいなぁと思います。彼の演技は、まさにその「社会人でも戦う」っていうメッセージ性があって好きです。

image

 この後Reiは世界大会に乗り込んでいきます。頂点から奈落に叩き落された後、自分に足りないものを冷静に見つめなおし、優勝に向けて一つづつ限界を突破していき、JNで完璧な優勝を果たしました。JNは通過点に過ぎず、世界大会がゴールです。JNのステージを見ているだけでも胸が張り裂けそうでしたが世界大会、どのような結果になるのか、この時点で他人事ではなく、このインタビューを通してReiの世界に足を踏み入れていました。

世界大会はフリースタイルをただ披露している場所のようでいてその背景にはいろいろな想いと決意、メッセージがこめられていてそれが開花するのはごく一部のプレイヤーだけ、うまくいってもいかなくてもその熱意があるので世界大会はものすごく盛り上がります。

次はいよいよ世界大会編に突入です!