#けん玉 【RAINBOW発売】夢元けん玉の歴史と思い出

MUGEN MUSOUの新商品が販売開始!

この記事は

1.新商品のテーマが”初代夢元のDNAを継ぐ”なので初代夢元について解説

2.夢元全盛期のけん玉事情についての歴史と思い出

で構成されています。読めばアナタもなんで夢元が伝説のけん玉なのか詳しくなれるかも!?


以下本編

MUGEN MUSOUの新商品が発売されました!スピンギアでも取り扱い開始です。商品ページはこちら。

MUGEN MUSOU(夢元無双)はけん玉プレーヤーなら言わずと知れた有名ブランド。製造元のイワタ木工はKWC(けん玉ワールドカップ)の優勝トロフィーを手がけているので知っている方も多いと思います。

今回の新商品レインボーのテーマが

“かつて多くの人に愛された、「夢元けん玉」のように”

“その「夢元けん玉」のDNAを継ぐけん玉として”

ということで、MUGEN MUSOUの前身、今や当時を知る人も少数派になってしまった初代夢元のことについてコラムを書いてみました♪


「使いやすいけん玉」だった夢元

(販売価格は1300~1500円でした。現在公益社団法人のけん玉協会は当時NPO)

 

夢元が製造されていたのは公式サイトによると2004~2009年。関東地方では2008年の夏くらいに製造終了の噂が広がり、東急ハンズや玩具店でけん玉プレーヤーが夢元を買い占める事態となりました。

私スタッフあきらも大会用として15本くらいストックした記憶があります。(人によっては100本以上買い貯めした人もいたはず)

当時はストリートけん玉ブーム(2013~)の前だったので、けん玉コミュニティ≒けん玉協会コミュニティだった訳ですが、夢元製造終了は界隈の大ニュースでした。

いきなり製造終了からスタートしてしまいましたが、なぜ夢元は買い占めが起きるほど人気だったのかというと、「使いやすかった」から。

詳しく見ていきましょう。

(夢元のスカイブルー、特に初期のロットはとてもグリップ力が強く人気でした)

 

夢元のシェアを伸ばした一番の要因はやはり塗装の良さだと思います。

私が初めて夢元を使ったのは2005年(当時小学生)だったのですが、初めて触ったときからその高性能さに驚きました。

「とにかくグリップが良い。灯台がよく止まる」

 

その当時のけん玉にはそもそも「グリップの良い塗装」という概念がほぼありませんでした。そこにいきなり出てきたハイグリップ塗装。

そして新品の夢元は塗装がツヤツヤ輝いていて美術品のように美しい。まさに衝撃。革命です。

(プロトタイプの夢元。テスト用の試作品)

夢元の試作品を触ると製品版ほど塗装が良くありません。開発過程で塗装も相当研究されたのだと思います。

 

そして塗装のみならず加工精度も当時のけん玉としては一段上の仕上がりでした。

(左が夢元で右が他社製品)

仕上がりが均一で個体差が少なかったのに加えて、写真にある糸の出ている穴の位置が、夢元は皿胴の上ギリギリ(1mm以下)の位置まで寄せてあるのが特徴でした。

これによって玉持ち系の技でもけんを綺麗に引き上げたり回転させたりといった動作がしやすく、この点も夢元が使いやすいと言われる理由です。

 

また当時としてはけんの先端がきれいな円錐形でないブランドや大皿・小皿が深すぎるけん玉も多いなか、そういう細かな点も加工精度が高かったことから「夢元=高品質」のイメージでプレーヤーに浸透していった歴史がありました。


競技選手に愛された品質

(2019年の全日本選手権。販売終了から10年経っても夢元で出場する選手もいました。どれが夢元か分かったらけん玉マニア!)

 

競技けん玉の大会では不正防止のために、検査に合格したけん玉は試合のとき以外は触ることができず大会本部で保管されるのですが、そこで他の選手がどんなけん玉をつかっているか見ることができます。

夢元が普通に流通していた2007,2008,2009あたりは全日本選手権での使用率は体感ですが8割以上だったのではないかと思います。おそらく再来週開催予定の2022年全日本でも夢元を使う選手がいるでしょう。

 

スタッフあきらも初めて出場した2006年の全日本から2011年くらいまでは大会では夢元を使っていました。

新作RAINBOWの説明で初代夢元のカラーは9種類だったとある通りで、なかでも大会で人気だったのは西日本の選手は赤、東日本では黄色や白でした。

(赤・青・黄・ピンク・黒・スカイブルー・白・ワインレッド・ゴールドの9色展開でした)

 

今のようにけん玉にラインや2色塗分けのカラーがなかった時代なので、回転視認性というよりは穴の見やすさや慣れでみんな色を選んでいたような気がします。

次々に新色が出ていたわけでもないので、逆に大会常連の選手には「○○さんと言ったら青の玉だよね!」みたいなイメージが定着したりしていて面白かったです。

白や黄色など明るい色は穴のコントラストが分かり易くて、好きな色でした。

 

ちなみに現在大会シェア1位を誇る「大空」が発売されたのが2008年の夏くらいです。大空も発売からどんどん品質改良が進んでいった歴史があるのですが、それはまた別の機会にでも。


けん玉ブームの到来とプレミア価格化

惜しまれつつも製造終了となった夢元。その後夢元はけん玉ブームの到来とともにプレミア価格のけん玉として有名になっていきます。

よく夢元は製造終了したから高値になったと誤解されるのですが、実際は製造終了後にあったけん玉ブームで夢元が欲しい人やコレクターが増えた結果オークションで高値取引されるようになった背景があります。

 

2012年頃から海外のけん玉シーンが盛り上がりを見せ、ブームの到来とともに日本人のけん玉プレーヤーのフェイスブックに毎日のように「夢元を持っていたら売ってくれ!」という内容のメッセージが届くような時期もありました。

月ごとに相場が変わるような世界だったので価格も幅広いのですが、新品だと最初5000円~10000円くらいのプレミア価格だったのが、一番高い時期だと人気色は40000~50000円にまで跳ね上がりました。

 

夢元生産終了前から業界にいた競技プレーヤーは、2012年あたりだとまだ買い貯めした夢元を持っていて、でも今後品質の高いけん玉が出るか分からないので迂闊に売れないといった時代です。

実はその頃には海外製のけん玉がハイスペックになってきて、単純な性能なら他のけん玉で良かったのですが、コレクションとして夢元が欲しい人がいる一方で、協会系選手は協会認定のけん玉でないと試合に出られないので未だ夢元が現役ハイエンドモデルでした。

 

少し脱線しますがその時代に夢元以外のけん玉はどうだったかというと、以下のようなものがありました。

(2013年のKendamaUSAプロモデル。ラバーペイント)

 

当時のハイスペックけん玉というと、ラバーペイントを初採用したKUSAのプロモデルが一番でしょうか。

間違いなくけん玉史のパラダイムシフトだった素晴らしい発明で、グリップ力やクッション性から日本のプレーヤーで大人気になりました。(玉だけ使ってけんは別のブランドに入れ替えるカスタムも流行)

 

当時日本で買える場所も多くなかった中スピンギアで取り扱いがあり、そろはむ入社前のあきらもお客さんとして合計10本くらいは2013Pro Modを買った気がします。

 

(KROM Noia プリントラバーコート)

 

KROMのプリントタイプのラバーコートも使いやすく人気でした。

個人的な思い出ですが、2014年の第1回けん玉ワールドカップにはこのNoiaで出場して4位になりました。技に2回転月面などが入っていて、しっかりグリップする玉に助けられた記憶があります。

 

そして

2013年の秋、夢元が夢元無双として復活!!

 

2012年末からの夢元復活プロジェクトについては企画元のグローバルけん玉ネットワークさんのサイトに詳しく載っているので機会があればぜひ読んでみてください。

当時私も夢元復活を楽しみにしていたひとりで、プロジェクト第1弾の「玉単品」販売や、玉購入者限定受注生産のモデルも買いました。

 

そこからの夢元無双の人気は皆様の知る通りで、様々なカラーが生まれ、また仕口や特殊なけんの塗装、形状の改良など進化を続け、今日のレインボーに繋がっていきます。


コレクションアイテムとしての初代夢元

夢元無双の復活により初代夢元のプレミア価格が落ち着いたかというと真逆で、夢元無双が有名になるにつれオリジナル版をコレクションしたい愛好家は増え、結果的に2017年あたりまでむしろ取引価格は上昇傾向にありました。

 

時系列的に言うと

2013年に夢元無双が復活→2014スイーツがattackペイント発売→2104年第1回KWC

という流れなので、2014年以降は完全に夢元無双や他ブランドの高性能けん玉がある時代です。初代夢元は(ほぼ)完全にコレクションアイテムとして取引されるようになります。

(夢元ブームだった時にいいね稼ぎのために撮った写真。レッドとゴールドがいません)

 

コレクター心を刺激するポイントとして、夢元には一般販売の9色以外にもたくさんのバリエーションが存在します。

 

ビニールパッケージではなく紙箱の夢元・紅白を縦に割ったカラー・金ラメ入りの寿けん玉赤青・大会参加賞のエメラルドグリーン/メタリックブルー/パープル・パールホワイト・大けん玉・小夢元・スターロード・太極・四神・縞黒檀

マニアになると協会シールの左下部分の線の描かれ方の僅かな違いでレア度を判別したり、などなど。

ほかにもホルスターやリストバンド、丸いシールなどいろいろあります。

 

コレクションとしての夢元は未だ求める人の多い逸品なのです。


おわりに

初代夢元は「なんか高値の付いてる昔のけん玉」という認識の人も多いと思いますが、販売されていた当時は品質の高さでプレーヤーに支持されていた機種です。

 

“かつて多くの人に愛された、「夢元けん玉」のように”

 

レインボーのテーマには、絶版になってプレミアがついた栄光の夢元のようにというよりは、

「初心者から大会上位選手までお手頃価格で使えた品質の良いあの夢元のように」

というメッセージが込められているのだと思います。

 

初心者の方も、上級者の方も、当時の夢元を知る方も知らない方も、なんとなく夢元の歴史を思い出しながらMUGEN MUSOU レインボーを使ってみてはいかがでしょうか。

 

では、では。また次のけん玉コラムで。