ワンドロップパノラマ発売記念インタビュー〜その1 #ヨーヨー

祝パノラマ発売!

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発売が決まって話題沸騰のワンドロップのパノラマの発売を記念して、シグネチャー主であるタカツさんにインタビューをさせていただきました!

商品説明以上の文章量のレビューやインタビューの文章を別々の2者が書く、という形で同じ情報をどう料理するかという業界では珍しい、競作?のようなレビュー合戦となりました。先行公開しているALTERNATIVE SPINのレビュー、インタビューの記事も御覧ください!

またワンドロップの公式サイトにあるご本人の説明も翻訳ソフトなどを使って読んでみてください。パノラマの狙いがずばりと書かれています。

スピンギアでは業界側の視点でちょっとディープに掘り下げていければと思います。記事自体は去年の11月に仮完成していて、入荷がいつなのだろうか、と首を長くして待っていたところの電撃的な発売日告知となりました。

・ワンドロップヨーヨーとは?

最近ヨーヨーを始めた方の中には、ワンドロップというメーカーに馴染みもない人もいるかと思いますが、アメリカのオレゴン州に工場があり、Made In USAで高い工作精度と専業である他のヨーヨーブランドとは異なり旋盤工場をもち、工業デザインの知見を取り入れた独創的なデザイン、ツボを抑えたスプラッシュカラー、個性的なチームメンバーによるユニークなモデルラインナップといまでは大手ブランドでは唯一となっているアメリカ産にこだわったブランドです。

コロナ禍で状況が一変したことを受け、販売戦略を変更し、中国産の安いモデルに対抗するため、アメリカ産であることを生かしつつ、小ロットで卸の割合を減らして、自社サイトでの直販をメインに切り替える戦略をとってきてます。最近、一般の店舗に入荷があまりないのはそのような理由です。今回パノラマは日本で活動しているタカツさんのシグネチャーモデルであるということもあり、日本に入ってくるワンドロップのヨーヨーとしては久しぶりの入荷となります。

・タカツさんについて

 

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アヤメカラーをシグネチャーカラーとしてプロデュースしたり(発売秘話はこちら)、最近はインスタグラムのハッシュタグ、#thingsthatrepeatの仕掛け人としてもヨーヨーコミュニティーに多大な影響を与えるトリックメーカー(ALTERNATIVE SPIN Blog記事)。
ワンドロップ所属。/

まずは公式のPVを御覧ください!

シグネチャーモデル発売おめでとうございます。ワンドロップの日本人のメンバーとして
所属から約7年の活動を経ての初のシグネチャーモデルですね!
今日はパノラマ発売に至る経緯とプロトタイプの変遷について伺えれば。

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ありがとうございます!一時はこのままリリースされないかと思いましたが、ようやくですねぇ…。
確かワンドロップに所属したのが2013年の9月なので7年前で、シグネの話が出たのが2015年だったと思います。
プロジェクトとしては5年越し…笑

2015年から始まっているプロジェクトだったんですね!
ワンドロップといえば競技シーンバリバリに特化した機種もありますが、
最近はコンセプトを明確にした哲学的な問を含むメッセージ性の強い機種が多く開発されています。
また、シグネチャーモデルの多くがシグネチャー主のプレイスタイルを
強く反映した”癖の強い”モデルになっているイメージがあります。
個性派揃いの日本人メンバーのシグネチャーモデルということで
”普通じゃない”機種だと期待をしているのですが、どのような経緯で、どんなスタイルを想定して設計されていますか?

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ワンドロップのチームメンバーのシグネを作っていくというアナウンスが2013年か2014年頃出まして、
話が来た時に準備しておいてという事だったので、2014年くらいから形考え出しまして
友人にCAD起こしてもらってブラッシュアップしていった流れですね。
で図面提出したので2015年くらいだった気がします。(うろ覚えですが)

ただ、開発を始めた当初の2015年と現在で想定プレイが変わってるんですね、
私自身のプレイスタイルの変換に伴ってというかヨーヨーとの付き合い方の成熟化というか。
まず2015年の時点ではロングコンボや複雑なトリックに焦点を合わせてます。
・ロングコンボに耐えうる回転力
・複雑なトリックに対応できるある程度の安定性
・安定性を損なわない程度のコントロール性
これが今回の製品版になるとガラっと変わりましてリピートトリック(10秒~15秒)くらいのトリックのプレイとトリックの開発自体に焦点を合わせてます。
・コントロール性を上げる為の回転力の犠牲はいとわない
・ストリングヒット、トリック中切り返しのしやすさ
・長時間のプレイでの疲労の軽減

2015年版の写真(モックアップ(3Dプリンタ試作))

2015年と製品版で共通しているのは下記の点ですね。
・キャッチ時にいたくないリムの形状
・直径55mm~56mm
・巾40㎜以下

ローエッジが標準化されて最近はあまり使わない言葉になりましたが、ハイウォール(エッジが高いこと)のデザインでむちゃくちゃ尖っていますね!
昨今のようにプレイスタイルの多様性が受け入れられている状況ではない、競技用ヨーヨー開発が盛んだった2015年の時点ではかなり野心的な作品になっていると思います。
ちょっと時代を先取りしすぎているというか。当時のユーザーの感覚で言ったら”使いにくそう”と言われそうな形状です。そういう意味では2021年のこのタイミングで発売されるの機が熟した、と言えるのかもしれません。もちろんパノラマ発売に合わせてのタカツさんの#thethingsrepeat の企画も合わせて受け入れられる素地ができたというか。

3Dプリンタでモックアップを個人で作成するって2015年の時点だとなかなかのことですよね。模型作りも趣味にされていて、なにかものを作ることへのハードルが低いタカツさんならではのシグネチャー作りへのアプローチかと思います。

モックアップとは-商品としての仕上がりをイメージするために、仮で作る商品の最終盤をイメージした形状模型。機能性をもたせることもあるが金属製品のモックアップは主に手にしたときの感覚などを確認する用途にとどまる。ヨーヨーの場合は近年ではプラスティック機種に関しては、FDM方式で出力された実際に使用できる”プロトタイプ”を作ることは主流となってきているが、メタルヨーヨーの形状のイメージのために”モックアップ”を作ることはほとんど無く最終的な製造工程と同じ機械と工程を経て、製品版と同じ仕様のプロトタイプを作ることが一般的。

 

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確かに2014年~2015年頃だと敬遠されそうなフォルムとスペックですよね、当時この路線の新作ヨーヨーは全くと言っていいほどありませんでしたから。認識している範囲だと2016年あたりから市場で見るようになって、2017年頃から比較的一般化していったイメージです。その辺りは当時設計段階で懸念はありましたが、こういったヨーヨーが評価される時代が来る自信はありました。それはオーセンティックな2000年代半ばのメタルヨーヨーを復刻したものでは無く、現代的ヨーヨーの設計とオーセンティックな質感のハイブリッドで無ければならないと思ってました。

上記の点からエッジはあくまでも”ハイウォール風”で留め、重量の配分等現代的なノウハウを取り入れた設計になってます。

この点で言うと2017年にワンドロップとStatic Unresponsiveのコラボレーションでリリースされた”Parlay”は同じスピリットを感じました。Parlayは一部のプレイヤーから熱狂的に向かい入れられたわけですが、当時”やられた…”と思いつつもパノラマの方向性が間違ってなかった事を確認出来ました。

モックアップに関しては当時DMMが出力サービス始めたので試してみました。

基本的にリムと手の接地面の形状確認の意味合いで作ったんですが、実はベアリングもサイドエフェクトも搭載出来ましてかなり軽いですが、普通にプレイできます。

(モックアップの質感はこれはこれで気に入ってまして、いつか重量配分調整して作ってみようかと思案してます)

うちもプラスティック機種のステップ2のときはDMMの出力サービス使ってモックアップ作りました。軸回りの図面きちんとしておけば組んだあとヨーヨーとして遊ぶこともできちゃうくらいの精度は当時からありましたよね。金属の場合はプラスティックと比重が違うので重さが違っちゃいますけどそれでもシグネが比較的すぐに、手元で形になる楽しさっていうのはよくわかります。

その密度で行動を起こしていたにもかかわらず、ワンドロップ独特のコミュニケーションラグで、そこからまた間があくんですね。

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海外メーカー特有のラグですねぇ。
私自身異常にセッカチなのでモヤモヤする事が多いです。笑

暫く(2年程)音沙汰無かったんですが、2017年頃オーナーのDavidから
「そろそろ作るからどんなの作りたいか教えてくれ!」
とまたメールが来たのですが、この頃になると私のプレイスタイルがかなり変わってましたので、
CAD図も2015年の物をバージョンアップさせました。
2015年バージョンに対して2mm程度巾を狭くしリムの形も明確なステップラウンドから曖昧なステップラウンドに変更してます。

普遍的なデザインを求められる通常のヨーヨーと違って多くの場合、シグネチャーモデルは個性を出すことが求められます。プレイヤーの意見に寄り添って作るシグネチャーモデルってナマモノなところがあって自分でもデザインのディレクションしてるのでわかるのですがあるプレイヤーのために作っていても今年のトレンドやいまのプレイヤーのスタイルにはまったものが”シグネチャーモデル”であって、来年はまた別の要求になっていたりするので間があくと形状変わってきますよね。

幅が更に狭くなっているのはタカツさんが方向性を見定めて、達人として熟成されてきているというところもあるかもしれません。幅が狭いことと、エッジが高いので、正確なコントロールが要求されるので経験者向きのデザインですが、このスペックが欲しい人には唯一無二な選択肢になっていると思います。技をするときにヨーヨーの回転に頼って挙動が雑でもなんとかなるのが最近の競技用ヨーヨーですが、パノラマはイメージ的には繊細にコントロールを決めていく人にとってはたまらない魅力がありそうです。雑な例えですが色を塗るときの筆に例えて、最近のバイメタル機種が何でもざっと塗れるハケだとしたらパノラマは技術は要求されるけれど繊細な線の引ける面相筆のような。

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しかしまたしても暫く(3年程)音沙汰がなく、
内心もう別にいいかなとか思ってたんですが、
2020年の2月頃に突然Davidから
「お待たせ!やっとお前のシグネを作る準備ができたよ!」
とのメール。
今回は三度目の正直、比較的トントン拍子でプロトまで進みました。
プロト制作にあたり、CAD自体は2017年の物を使用してます。

2017年バージョンのプロト(以下1st プロト)は大変満足する出来だったのですが、
やはり2017年から好みが変わっている部分もありますので少し違和感があったんですね。
これ言うとCAD描いてくれた友人に怒られてしまうんですが、

なんていうか…

回りすぎるんですよね。

それに安定感もあってとっても高性能。

ただ、1stプロトの出来は素晴らしかったので
このまま製品化でもいいので、2nd プロトは少し冒険してみることにしました。

1st 直径56mm 巾38mm 重さ65g on ウルトラライト

2nd 直径56mm 巾 38mm 重さ 63g on ウルトラライト

左Ver2 右Ver1。リムが少しだけ違います。
但し、操作性向上による回転力の犠牲は厭わない”の注訳入りでリクエスト
(重量バランス自体も操作性向上させる為にアレンジしてもらってます)

コロナの影響もあり2nd プロト届くまで少し時間かかったんですが、
届いて即日2nd プロトでGOを出しました。

うすうす気づいた方もいると思いますが性能面では1st プロトの方が上なんです、
ただ2nd プロトは私の求めていた、”ふと”した折に手に取ってしまうヨーヨーに仕上がってました。
肩肘張らずに普段着で付き合えるヨーヨーというか、
テレビボードや机にポンと置いてあるヨーヨーみたいな。
恐らく数値では表現の出来ない部分を追及出来たな…と。
(前述のトリックの開発という点でもこの部分は重要でして、私の場合は如何にストレスなくヨーヨーが出来るか?
がトリックの開発速度や質に影響が出るんです)

その感覚、回りすぎると疲れる、と社内では表現しています。高性能なヨーヨーが必ずしも”常に使いやすい”、ではないんですね。
TPOによってヨーヨーを使い分けたいとき、ただ遊ぶときに”競技用モデル”はちょっと手に余るというか。
バイメタル機種など最大外周にウエイトを寄せて一回のスローでギュンギュン回る機種はリムの安定感もあって、
フルパワーで動かせばスピードは出せるし回転力は落ちないのだけど実重量ではない部分で動かすときに力がいるので
集中して”練習”するときではないと手に余る、という感覚がありますね。なのであえて回転力を落とす、というのは分かります。
弊社製品で恐縮ですが、メタルスピンガジェットもそこらへんは意識しています。

すでに理想のヨーヨーの形状はある程度完成しているのに、それでも多くのブランドが様々な機種を開発して、重心の寄っている場所が異なって模索されているのはその奥深さからだと思います。

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メタルスピンガジェットで思い出しましたが
実は1stプロトをテストしてる段階で入手しまして、
スローしたあと回転が落ちてくのを感じその”フレンドリーさ”にニヤニヤしちゃいました。
これは完全に意図して回らないようにしているな…と。

1stプロトでもう一つ気になった点はサイドエフェクトがウルトラライト搭載の時点で完成されてしまってたんですね。
個人的には完成されてしまってるものよりもやや曖昧な部分があった方が魅力を感じるので、軽量化は選択肢を増やす意味合いもあります。
この部分も見事にハマって、正直私自身搭載するサイドエフェクトは日によって変えたりしてます。

ワンドロップの多くの機種に採用されていてアイデンティティーの一つにもなっているサイドエフェクトは構造設計の面から言うと中心部分の軽量化とは逆のコンセプトなので近年のヨーヨー設計からすると”余計なもの”扱いされてしまうんですが、完成されていて手を加える余地がないメタル機種に重量と重心の変化を簡単に加えられるという面では傑作だと思っています。

ウルトラライトが完成というのも中心部の最軽量がヨーヨーデザインにとっての1つの最適解なので間違いないのですが、真鍮のスパイクをつけてみたり、LEGOでプラスティックパーツをつけて遊んだりの遊び心が発揮できるのもサイドエフェクト搭載機種ならではの魅力ですね。

こうして長い開発期間を経て発売されるパノラマですが、パッケージやその他物作りのこだわりについてパート2で伺っていきたいと思います。