この度、ガザムネさんとのSGXを使用したコラボモデルとしてガザフューリーが発売されます。それにあたり開発秘話をご本人に寄稿していただきました!
以前からX上での活動を拝見していたものの、実際の面識はない状態でコラボの話まで一気にもっていきました。X上のやり取りだけで生まれたヨーヨーとも言えます。
どうも、普段はまじめな文章を書かないガザムネですが、今回はまじめに書こうかと。
あの何かの形で届けたいとポストしたまま、そのまま動きがなかったガザフューリーが新型になって戻ってきました。
設計はガザムネが行い、製造はスピンギア様によるコラボレーションヨーヨーで、サイズ感、材質、重量をオリジナルに近づけ、軸周りは大胆に一新しSGXシステム化しています。
もともとは、模倣ヨーヨー『ドラフター』から始め、オリジナルのヨーヨーの『フォトフレーム、ダイナシー』といったものを作っていたのですが、このフォトフレームとダイナシーがジャムっぽいとX上で囁かれ、実際に振った人からも『ジャムだ』とか『あの頃のヨーヨーがここにいる』とか『バズオン味ある』という感想をもらい、誉め言葉と受け止めなかったへそ曲がりの自分が『じゃあアンサーヨーヨー作ったるよ』と始めたのがガザフューリー開発計画でした。
まず始めたのは2024年に復帰したばかりだった自分はヨーヨージャムって何?という状態だったため、ヨーヨージャムの歴史、アーカイブデータや資料を調べ、売れ筋だった『リン』と『キックサイド』の二つに候補を絞り、生来のオタクだった自分は『ねーちゃんが描かれてるヨーヨーにしよう』というどうしようもない理由で『リン』の模倣を開始しました。
3Dプリンタ版ガザフューリー
設計の元になったのは自作ヨーヨーのダイナシーで、ハイエッジラウンドヨーヨーに擬態したアンダーカットエッチプロファイルヨーヨーになっています。
何を言ってるのかわからないと思いますが、ハイエッジのままだと3Dプリンタ由来のシームや積層痕でスリープロスが酷かったり、フィーリングが悪かったため、エッジを残して壁面を0.7mmほどアンダーカットしました。
またこだわりのポイントとして新品リンのOリングのストリング接触面位置とパッド面が来るようにバンプをつけて持ち上げています。
これによりサイドから見たシェイプがリンに見えるが、実際はアンダーカットのエッチプロファイルのヨーヨーになりました。
問題はこの初代ガザフューリーは素材の比重差の都合で、リアルサイズを再現すると回転力がまるで足りないためリンが『54.4mm』のところを『56mm』にしています。
結果、リンの小回りが利くサイズ感は再現できていませんでした。
また、丸みのあるリムを分割プリント後に貼り合わせる方法で作っていたため、歩留まりも大変悪かったです。(貼り合わせミス品はテストのため配ったり、磨き方法構築の礎になりました)
※このころ試作品を協力者に渡し『JAMヨーヨーに詳しい人に振ってもらって~』と軽い気持ちで投げたら、元JAMのメンバーから感想をもらってくる珍事件が発生し、顔を青くしました。
※これによりガザムネヨーヨーは、ジャム再現機を所有している時に元JAMのメンバーに遭遇した時は、試し振りをお願いする慣習が発生しました。
ガザフューリーポリカーボネイト(試作屋製造版)
3Dプリント版がリムのカット位置の都合で歩留まりが悪く、アナザーバージョンでリムのカット位置とキャップを変えた『マッチョマン』の売れ行きが良かったため、ガザフューリー3DP版は頼まれたときに配布や、お土産として人にあげるヨーヨーとして細々と生産をする程度でしたが、販売要望があったため安定した販売数を確保する方法として削り出し生産を検討し3Dプリント版の図面を改変して中国のCNC加工業者に試作品依頼をしたのがこのポリカーボネイト試作版でした。
特徴として、ベアロック周辺までポリカのため大変脆い設計となっています。
また、ポリカになった理由もPOMだと材料費が高かったのと、比重が3Dプリント版に近かったためポリカで作りました。
ガザフューリーポリカーボネイト(量産試作版)
一番の問題児です。
過去にメタルヨーヨーを作ってもらった工場から何か削り出し案件はありませんかと来たので、ベアロックとベアシートをメタル化したガザフューリーPC版データを投げたところ、本来アルミで指定していた部分がまさかのSUS304。
度重なる納期遅延や、やっと納品されても検品が悪く傷だらけのボディ、六角ボルト付近が割れているものが納品され、工場と大喧嘩しました。
ここでいったん削り出し量産はむずかしいと判断し、費用回収のため程度の良かった2個を一般販売、その他数個を友人たちに買い取ってもらいました。
ブラックリップ
とあるイベントで先行提供、後日クリムゾンとブラックのハーフカラーで販売したヨーヨーです。
初期の作品であるガザフューリーを、ある程度の数の設計を行い向上した技術で作ったらどうなるだろう?という自問自答への回答として作ったヨーヨーで、直径54mm台をテーマに再設計を行いました。
その結果、小回りは効くがギリギリまで材料を詰めているため塊感が強く、回転力も初代に及ばず、それでも実際に振ると意外に回り、フィーリングヨーヨーやブティックヨーヨーとしては及第点だろうと判断しイベントにこっそりテスターになってもらったあと販売しました。
名前が違う理由はいろいろありますが、『ガザフューリーPC』の納期遅延中に作ったためガザフューリーの名前が使えなかったのが一番の原因です。
ブラックリップSGX
現物をロストしているため手元に3Dデータだけが残っていますが、ブラックリップのSGX仕様版です。
ブラックリップはCベアリングで作りましたが、やはり小径かつ密度が低いため十分な回転力が足りず不満の残る出来でした。
ある日、Xのスペースの会話中に電撃的に脳に降ってわいた構想から回転力が足りないならベアリング径を下げればいい、何ならSGXならブレの心配も減ると思いつき設計製作まで一晩で行い友人たちの集まりに持ち込み振ってもらいました。
おおむね好評の評価でこれならいけるか?と削り出し欲がむくむくと…。
また、このブラックリップSGX版は3Dプリント版専用設計のほかに、癖で削り出し前提の図面も用意してあり、それがSG版ガザフューリーの元になります。
最新版 ガザフューリーSG版
ちょうどPC版工場とのやり取りに限界を感じ、Xにて『スピンギアさんのオリジナルヨーヨー作成サービスってまだやってるのかな』とつぶやいたのがきっかけでした。
そこからTAKAさんから連絡をいただき最初に出したガザフューリーPCの図面はボルトナット式で難色を示されましたが、SGXを組み込んだ直径54.4mmのPOM前提設計の図面に興味を持っていただき、とりあえず試作生産からのあれよあれよと本量産が決定しました。
このガザフューリー最新版の設計ポイントは、SGXシステムを使いながらスピンガジェットPOMから離れつつどうリンを感じるようにするかでした。
まず、SGXシステムは昨今のヨーヨーに比べてエッジが高めですが、リンに比べると圧倒的に低いので、SGXに覆いかぶさることでハイエッジ化。
その覆いかぶさる度合いや、エッジの位置は、開けポンリンのOリングのストリング接触面とSGXシステムのパッド面を合わせるとエッジ位置がおおよそ同じになるように逆算してデザインしています。これは初代ガザフューリー設計思想をどうしても残したかった私が導き出した答えです。
拗らせた男の設計思想が生み出したエッジ位置を変更するカバー構造のボディにより、SGXを使用しながらスピンガジェットPOMとは違った振り心地の獲得も同時に行えています。
軸周りのメタル化と削り出しボディによるヨーヨーの高精度化と、作者の拗らせたこだわりにより『最新技術で丁寧に作られたヨーヨーでありながら、リンフューリーを感じられる最新のクラシカルヨーヨー』としてSG版ガザフューリーは誕生しました。
売れ行きが良ければSGにお正月ヨーヨーの復活やオリジナルヨーヨーの素体にSG様に売り込みやすくなるので、皆さん、買ってください。
贅沢は言いません、2個、おひとり様最低4個以上買っていただけるとこのガザムネ、感無量となります。
以上ガザムネさんによる開発秘話でした。
スピンギアとしてはSGXを3Dプリントヨーヨー制作や、他のヨーヨーメーカーにもプラットフォームとして広く活用してもらって、カスタムヨーヨーを楽しむ文化を手軽に、精度高く広めていきたいという思いがありました。
そのような中で、試作を繰り返してかなり煮詰まってきていたモデルであったため、SGX活用のモデルケースにもなれば、と思い今回のコラボに至りました。また今回、こだわりのあるクリアのキャップも合わせて製造しています。お気に入りのイラストや雑誌の切り抜き、ステッカーなどを入れてオリジナルキャップを作って遊ぶところから始めてみてください!サイズCスペーサーを使った感触もかなりよく、楽しめます。
スピンギアとしてヨーヨージャムオマージュ(非公式)を含む製品に関わることについて
メーカー創業時からの付き合いがあり、活動期間中は多くのコラボモデルやチームメンバーのシグネチャーモデルを一緒に作ってきた数少ないショップの一つという自負があります。またヨーヨージャムとフロリダが青春だったと振り返るくらいには、思い入れがあり、今でも復活を願うブランドの一つでもあります。そのような中でスピンギアとしてヨーヨージャム味のある商品を作ることは検討を重ねた上での製造となっています。
1)メーカーとして活動を休止している
現行メーカーではなく、活動を休止しているため、ブランド活動に支障を与えるものではないという認識
2)引用元をはっきりしているが設計思想は別物
リンフューリーインスパイアではありますが、SGXシステムとガザムネさんの試行錯誤によって、オリジナルを模倣したものではなく、直径やフィーリングが似ているけれども全くの別物のヨーヨーに仕上がっています。またオリジナルのリンフューリーの後継機種、のような形で売るつもりもなく、元ネタのある新規ヨーヨーとして紹介させていただきます。自分自身、ビッグヨーオマージュのボーダレスというヨーヨーも活動休止の翌年には作っているので何かを参考に次につながるものを作ること自体は悪いことではないと考えています。
3)必要があればオーナーに連絡が取れる距離感を保っているため
今回のプロジェクトがヨーヨージャムの権利を侵害するものという認識はありませんが、必要があればコンタクトを取り許諾を得ることのできる体制はもっています。心身的な疲労も活動休止の理由の一つだったので公式コラボをうたわない今回のようなオマージュレベルの企画を毎回報告する必要はないという認識です。